Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のスイーツ面白事典>

vol.22
シュークリームの仲間たち

どんな洋菓子店に行っても必ずおいてあるのが、シュークリーム。
シュー生地の「起源」については、以前お話をしたので(vol.8「シュー生地のルーツと応用」参照)今回は、シュー生地を使った、いわばシュークリームの「仲間」のお話をしましょう。

実は、シュークリームというのは和製英語・仏語?で、フランスでは「シューアラクレーム」と呼ばれます。シューはフランス語で「キャベツ」の意味。焼き上がりのかたちがキャベツを連想させるからだと言われます。これに英語の「クリーム」を合体させて生まれたのが「シュークリーム」という和製名称。なので、フランスやアメリカでシュークリームと言っても通じないのでご注意を!

さて、日本の洋菓子店では必須のシュークリームですが、フランスのパティスリーでは、ほとんど見かけることがありません。シュー生地にクリームを詰めただけのシュークリームではあっさりしすぎていてフランス人にとっても甘味が足りないのかも知れません。代わりに見かけるのがいわゆるシュー生地を使ったシュークリームの仲間たち。

皆さんは、シュー生地を使ったお菓子の名前をいくつ挙げられるでしょうか? フランスのパティスリーで一番多く見かけるのは「エクレア」、それから大小のシュークリームにフォンダン(糖衣)を塗り、積み重ねた「ルリジューズ」。これは修道女の姿をかたどったものだと言われます。あとはシュー生地を大きなしずく状にしぼりフォンダンを塗ってどんぐりのかたちを模した「グラン」。シュー生地をドーナツ状に絞り、あいだにプラリネ(ナッツペースト)のバタークリームを挟んだ「パリブレスト」もよく見かけます。

▼ルリジューズ
▼グラン
▼パリブレスト

少し凝ったお菓子だと、丸いパイ生地を土台のふちにキャラメルをつけた小さなプチシューを貼り付けて王冠のようにして、中にシブーストクリームを絞ると「サントノーレ」といお菓子になります。
最近、日本のパティスリーでも、パイ生地の上に3~4個プチシューを貼り付けてクリームを絞ったプチガトータイプのサントノーレをよく見かけるようになりました。同じくパイ生地とシュー生地を使ったお菓子では、ひなぎくのかたちのパイ生地の縁にシュー生地を絞り、フルーツをキレイに並べた「マルグリット」というお菓子もあります。

▼サントノーレ
▼マルグリット

ときおり日本のパティスリーでも見かける「ポンヌフ」という焼き菓子も実はシュー菓子の仲間です。
こちらはパイ生地を小さなお椀のような金型に敷き込み、そこにシュー生地とカスタードクリームを混ぜたものを絞り、格子状に細いパイ生地を飾り、焼き上がりに粉糖とグロゼイユ(またはフランボワーズ)で紅白にデコレーションしたもの。

▼ポンヌフ
▼シューケット

ショーケースの上に紙袋などに入れられて置いてあるのが「シューケット」。これはシュー生地を小さく絞り上からあられ糖をふりかけて焼いたシンプルなもの。フランス人はこれを買って、歩きながらポップコーンを食べるような感じで口に放り込んで食べます。

前にも書きましたが、シュー生地にグリュイエールチーズを混ぜて焼けば、「グージェール」という フランス料理のコースにも登場する立派な前菜になります。

多種多様なお菓子を生み出すことが出来るシュー生地。しっかりとマスターして、ご自身のお菓子のレパートリーを広げてください。

 

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。
日本創芸学院「コーヒーコーディネーター養成講座」テキスト「コーヒーショップの経営」について執筆を担当、「飲食店開業セミナー」講師も務める。

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