herb & aroma mail magazine

ハーブ・アロマ メルマガ 「佐々木薫先生のエッセイ」
vol.73

春のハーブ&アロマ養生

 ダマスクローズ精油の産地ブルガリアでは、3月1日は「ババ・マルタ(マルタ=3月、ババ=おばあちゃんの意味)」のお祭りです。待ちに待った春。けれども春の空は気まぐれなので、気むずかしいおばあちゃんに例えられて「3月おばあちゃん」と呼ばれます。季節の変わり目の不安定な気候で体調を崩さないよう、健康と幸運を祈り、赤と白の糸で作った「マルティニッツア」というお守りを親しい人同士で贈り合います。お守りは肌身離さず身につけ、春を見つけたとき、近くにある実のなる木に結びつけると願いが叶うそうです。

▼ 左のマルティニッツアは赤い糸と白い糸で編まれ、チャームやブレスレットを作る。
ブルガリアの町では市販品が12月頃から売られるとのこと。

 日本では春先に節分や桃の節句を祝いますが、長い冬が終わる頃に新しい春に向け、厄除けや健康を祈る習慣は、世界各地の日常生活にごく自然に取り入れられているように思います。アーユルヴェーダや中医学などの伝統療法にも春の養生、春の過ごし方の教えがあり、ハーブやアロマテラピーにも応用できる知恵がたくさんあります。

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 中医学では、自然界に存在するもの全てを「陰」と「陽」に分類する考え方があります。季節の移り変わりとともに陰陽のバランスは変化し、3月は冬のあいだ優勢だった「陰」が少しずつ減り、「陽」が一気にあふれる季節のはじまりです。社会生活でも慌ただしくなる時節でもあるので、心身共にバランスを崩しやすい季節といえるでしょう。

 気温が上昇することで、体の中も活性化してきます。冬のあいだに体中に溜め込んでしまった水分や老廃物や脂肪などを、体外へ排出しようと動き出します。消化器系がフル稼働する時期、すなわち、春は、デトックス(毒素排出)に好適なのです。春先に美味しいフキノトウやタラの芽、菜の花など、苦みのある山菜にはデトックス作用があります。その時期の体調を整えるために必要なものが旬の食材として出回る、自然の恵みは、なんと理にかなっていることでしょう。かつて5月に南ドイツを訪問した時は、ちょうどホワイトアスパラの収穫の時期で、太くて長いアスパラを茹でるための専用の鍋やお皿がどこの家庭にもあるようでした。ホワイトアスパラにも利尿作用があるそうです。

▼ 春の食材のホワイトアスパラはデトックスに役立つ。

 中医学では春は「肝(かん)」をいたわる季節で、頭痛、鼻づまり、めまい、不眠、イライラなど春先に起きやすい不調は、肝の乱れによるものかもしれません。まずは「肝」の調子を整えることが大事です。肝の働きを正常に戻し、肝の疲れを労うのに役立つのが酸味です。酸味の代表と言えば柑橘。ハーブで言えば、ハイビスカスティーがおすすめです。また、「肝」は目とつながるので目も疲れやすくなります。蒸しタオルにラベンダー精油を1~2滴たらし、首の後ろに温湿布するとよいでしょう。

▼ ハイビスカスティーにパイナップルなどのフルーツ、生のジンジャー、砂糖、フレッシュミントなどをブレンドしたアレンジティーもおすすめ。

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 寒い冬の間、体は緊張しているため、春はその緊張をゆるめることも大切です。ハーブティーならレモンバームやリンデン、レモングラス、ジャーマンカモマイルなどがおすすめです。生活のリズムを整え、自律神経のバランスを整えることで免疫力も高まります。

 入浴や呼吸法などは、生活の中で簡単にできます。その際には、アロマをスプレーやディフューザーでくゆらせるとよいと思います。アロマの選び方によって、リラックスも出来ますし、逆に集中することも出来ます。太陽の光を浴びて、歩くことも効果があります。お天気のよい日は積極的にお散歩しましょう。その際には、手首、足首、首を冷やさないようにすることもお忘れなく。

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日本園芸協会 指導部 佐々木薫



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佐々木 薫(ささきかおる)
プロフィール:
生活の木 Herbal Life College主任講師。
公益社団法人日本アロマ環境協会認定アロマテラピープロフェッショナル。
(株)生活の木カルチャー事業本部ゼネラルマネージャー。
NHKをはじめテレビ、ラジオの出演多数。
日本園芸協会の通信教育講座「ハーブコーディネーター養成講座」「アロマクラフト講座」テキスト執筆者。

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日本園芸協会 学習サービス課 aroma@gardening.or.jp




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