herb& aroma mail magazine

ハーブ・アロマ メルマガ 「佐々木薫先生のエッセイ」
vol.71

スパイスで心温まる冬を

 あけましておめでとうございます。このたびの能登半島地震により、被害にあわれた皆様、ご家族の方々に深くお見舞い申し上げます。

 おせち料理はいただきましたか? ご存じのように、おせちにはそれぞれ意味があり、長寿を願うエビ、マメに働くようにと黒豆、数の子は子孫繁栄、きんとんは金運を願っていただきます。中でもエビは体を温める魚介類として薬膳にもよく使われるそうです。薬膳の元となる漢方や中医学の考え方は医食同源。薬と食べ物に垣根はなく、病気にならないように、また回復を早めるために食事が重要視されてきました。今の季節の課題は「寒」、すなわち寒さです。冷えは免疫力を下げるため、風邪やインフルエンザにかかりやすくなったり、さまざまなトラブルを引き起こします。

 そうした寒さに効果的なのがスパイスです。スパイスの多くには血行を促進し、体を温める作用があります。スパイスというとカレーやエスニック料理のイメージがあり、暑い季節の食事向けなイメージがありますが、冬こそスパイスを活用し、料理だけでなくお茶やドリンク類など、さまざまなアイデアで広範囲に活用するとよいと思います。

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 多くの人になじみのあるスパイスはシナモンでしょうか。ひと言にシナモンと言っても、セイロンシナモン、カシア、肉桂(にっけい)、桂皮(けいひ)、ニッキ等々、種類や呼び名もさまざまで混乱することがあります。肉桂、桂皮は生薬としての名称で、肉桂はセイロンシナモン(Cinnamomum verum) 、桂皮はカシア(Cinnamomum cassia)にほぼ相当します。
 桂皮は日本薬局方に記載され、和名はシナニッケイ、トンキンニッケイで、品質などについて定められた基準があります。医薬品である漢方薬の材料として用いられるのは桂皮です。葛根湯(かっこんとう)、桂枝湯(けいしとう)などに使われています。冷えからくる痛みを和らげ、お腹を温め、胃腸の働きをよくして消化機能を高めるとされます。
 スパイス売り場に行くとセイロンシナモンとカシアが並ぶところもあれば、どちらも「シナモン」として売られる店もあります。まったく違うわけではありませんが、両者は植物としては別物ですし、香りも共通点はありますが、まったく違います。

▼ セイロンシナモン。
薄い樹皮を数枚重ねて巻き上げ、乾燥させて作る。フルーティーで繊細な香り。スリランカでは煮込み料理にはスティック状のものを手で折ってつかうこともある。
▼ カシア。
産地は中国またはベトナム。日本産のニッキに近い香りのため、日本人にはなじみがある。京都名物の八つ橋には「ニッキ」が使われていたが、最近は極めて稀少になり、カシアで代用されることが多い。

 セイロンシナモンにはシンナムアルデヒドという成分が含まれ、毛細血管を強化する酵素「Tie2」を活性化する働きがあります。傷ついた毛細血管を修復するので、血流がスムーズになり、冷えの改善や免疫力の強化、肌のくすみや抜け毛の改善なども期待できます。

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 他にも冷え対策に取り入れやすいスパイスとしては、ジンジャー、ブラックペッパー、クローブ、カルダモンなどがあります。ホットワインやチャイなどがおなじみですが、スパイスは単独で使うより、ミックスした方が使いやすく、強すぎると思ったら、他のスパイスを加えると刺激や効果が緩和されます。朝食のトーストに、バター+シナモンパウダーは定番ですが、ブラックペッパーというのもおすすめです。

▼ チャイ。
使うスパイスに決まりはなく、お好みで組み合わせてよい。オーソドックスな組み合わせはシナモン、クローブ、カルダモン。

 被災された地域の皆様の安全と、一日も早い復旧を祈念します。本年もよろしくお願い申し上げます。

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日本園芸協会 指導部 佐々木薫



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佐々木 薫(ささきかおる)
プロフィール:
公益社団法人日本アロマ環境協会認定アロマテラピープロフェッショナル。 NHKをはじめテレビ、ラジオの出演多数。 日本園芸協会の通信教育講座「ハーブコーディネーター養成講座」テキスト執筆者。

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日本園芸協会 学習サービス課 aroma@gardening.or.jp




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