herb& aroma mail magazine

ハーブ・アロマ メルマガ 「佐々木薫先生のエッセイ」
vol.58

冬に活躍、スイートオレンジ精油

 柑橘のおいしい季節になりました。日本は世界に誇る柑橘王国で、日本原産のものもたくさんありますが、一番人気はやはり「温州(うんしゅう)ミカン」でしょうか。原産は日本ですが、中国の柑橘の名産地である浙江省の「温州」が名前につけられたようです。

▼ 温州ミカン

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 日本固有の柑橘としては「タチバナ」がありますが、果実より花や常緑の葉が注目され、古事記や日本書紀に不老不死の力、永遠の命をもたらす霊薬として登場します。京都御所紫宸殿前に植えられる「右近の橘、左近の桜」の由来です。しかし、「コタツでみかん」が日本の冬を代表する風物詩であったように、現代の日本ではミカンはとてもなじみのある庶民的な果物になっています。

 一方、ヨーロッパに目を向けると、オレンジはギリシャ神話に登場し、白い花は純潔、果実は豊穣のシンボルとされ、盛んに称えられ、絵画などにも描かれています。ヨーロッパの暗い冬を照らす太陽の象徴ともされ、詩人に歌われ、貴族たちの憧れでした。ヴェルサイユ宮殿には「オランジェリー」というオレンジを作るための温室が設けられ、ナポレオン3世がチュイルリー宮殿に作った温室は、現在美術館になっています。

▼ スイートオレンジ
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 ミカンもオレンジも魅力あふれる果実であることに変わりはないと思いますが、味、香り、外観、栄養価、効能、どれをとっても優秀です。柑橘類の香りは果肉や果汁にあるのではなく、「果皮」にあるということは意外と知られていません。果皮に含まれるエッセンス、アロマテラピーではそれを圧搾した精油を用いますが、果皮を指先で押しつぶして飛び散る油がそれです。なので、果皮を肌に集中的にこすりつけたり、お風呂のお湯に大量に浮かべたりすると、赤くなったり、ピリピリしたりすることがあります。

 スイートオレンジ精油の主要成分は「リモネン」です。マジックインキなどの油性の汚れを落とし、市販の洗浄剤などにも活用されています。リモネンは油との親和性が高く、油汚れを落とします。これから年末にかけてのお掃除にはとても役立ちます(*1)。また、リモネンは交感神経を刺激し、新陳代謝を活発にすると言われ、血行を促し、体内の代謝を高める働きが期待できます。芳香浴や入浴剤として、寒い季節にはぴったりですし、香りで気分が明るくなり、免疫力も高まりそうです(*2)。他にもリモネンを多く含む精油には、レモン、グレープフルーツ、マンダリンなどがあります 。

*1:拭き掃除など、汚れを落とすのにスイートオレンジ精油を使用する場合は、家具や床などを傷める場合もありますので、十分ご注意ください。使用できない素材もあります。

*2:スイートオレンジ精油は皮膚刺激があるため、希釈したものでも敏感肌の方は特にご注意ください。

 もちろん、果肉にはビタミンCが含まれますから、風邪の予防にも役立ちます。気忙しい日々には、オレンジやミカンを味わうゆったりした時間も必要でしょう。「こたつにミカン」は理にかなっていたということですね。

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日本園芸協会 指導部 佐々木薫



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佐々木 薫(ささきかおる)
プロフィール:
公益社団法人日本アロマ環境協会認定アロマテラピープロフェッショナル。 NHKをはじめテレビ、ラジオの出演多数。 日本園芸協会の通信教育講座「ハーブコーディネーター養成講座」テキスト執筆者。

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日本園芸協会 学習サービス課 aroma@gardening.or.jp




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