ハーブ・アロマ メルマガ 「佐々木薫先生のエッセイ」
vol.52
夏を爽やかに過ごすハーブ&アロマ活用法
漢方では、梅雨の時期を「長夏」として、夏と区別して考えます。暑さに加え、「湿邪」という湿度が大変高い季節です。脾臓が弱る季節で、食欲低下や下痢、倦怠感など体が重くなりがちです。この時期は雨に濡れない、体を冷やさない、脂っこいものを避ける、適度に体を動かすなどが重要です。最近は雨の降り方も変わってきて、スコールのような豪雨だったり、ミスト(霧)のような雨だったり、傘を差さずにしのぐ人も見かけますが、体を冷やすので避けた方がよいようです。
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気候変動、地球温暖化の煽りを受け、日本の夏はますます過ごしにくくなっています。今年はどんな夏になるのでしょうか。アロマのなかには涼をよぶものなどもありますが、むし暑い季節をただ不快に思うのではなく、前向きに受け止め、ハーブやアロマの力を借りて愉快に過ごす、それが「夏の香り活用術」ではないかと思います。
そもそも、どうして「暑い」と感じるのでしょう? 暑さを感じる体の仕組みを見てみますと、人間は周りの環境に左右されることなく一定の体温(体内37℃程度)を保つ恒温動物です。食事や運動をすると体内で熱が生産されますが、一定の体温を保つために、その熱を放散する機能を持ち合わせています。その仕組みのひとつが「発汗」です。汗が蒸発する時の気化熱で皮膚の温度を下げます。気温が高いと空気中への放熱が進まず、熱が体にこもり、「暑い」と感じるようになります。暑さを感じるのは皮膚の知覚神経でその刺激が脳に伝わり、自律神経が発汗をコントロールします。
では涼感を得る香りはどんなものがあるでしょうか? 第一に思いつくのがペパーミントです。ペパーミントには体感温度を下げる働きがあり、その研究報告もあります。市販の夏用ボディスプレーなどにもよく使われます。ユーカリなどもよいでしょう。柑橘系の香りもおすすめです。ペパーミントとブレンドするのがよいでしょう。バジル、ジュニパーベリー、ローズマリーといった活力をつける香りを、ミント+レモン+バジルといったブレンドで使うと夏バテ防止の香りになります。夏は元気であることが重要です。
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また、イランイラン、ジャスミン、チュベローズ、バニラといった南国に咲く甘い香りの花、またはそのイメージの香りもおすすめです。暑い空気によく合います。南国リゾートを楽しむ気分を呼び覚まし、暑さを前向きにとらえる作戦です。特に、まだ海外に行きにくい今年の夏は、香りでバカンス気分を楽しむのもよいでしょう。
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暑さに対応する体のはたらきは自律神経です。交感神経と副交感神経、緊張とリラックスがバランスよく働くためにもアロマでリラックスしたリフレッシュすることは効果があります。また、栄養・運動・休養といった日頃の健康管理も大事なことは言うまでもありません。自律神経は体温調節のみならず、全身の調整に関わる重要な働きをします。暑さは不快ですが、私たちが本来持って生まれている体温調節機能を順当に働かせることで、自律神経の発達を促すことにもなります。春夏秋冬の暑さ寒さも「自然の恵み」と受け入れることも大切です。
日本園芸協会 指導部 佐々木薫
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