herb& aroma mail magazine

ハーブ・アロマ メルマガ 「佐々木薫先生のエッセイ」
vol.46

スパイス・コーラを探る

 寒くなって来ると、スパイスの香りが嬉しくなります。ホットワインや温かいチャイ、ビーフシチューやエスニック料理、洋の東西を問わず、スパイスが活躍します。スパイス類には共通して、殺菌作用、興奮作用、からだを温めるなどの作用があり、生産地は、インド、スリランカ、インドネシアなど、かつては貴重なスパイスを求め、ヨーロッパ人が争いました。

 インドやスリランカの伝統療法「アーユルヴェーダ」では、スパイスも免疫力を高めるなどの効能を持つ重要な薬草です。私たちが使うスパイスは、パウダー状にしたものが多いですが、現地で用いるのはほとんどがホール(原形)状です。ホールの方が穏やかに香りを発揮するので、仕上がりもまろやか、調整がしやすいそうです。ピリッと利かせたいときにはすりつぶしたり、グラインダーでおろすなどします。あらかじめパウダーにするより、使う都度の方が、香りは新鮮です。特にカレー料理やハーブティーなど、煮出して使うときには、ホール状がおすすめです。

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 今、巷ではクラフトコーラが人気です。クラフトコーラとは何でしょう? 定義はないようですが、クラフトビール、クラフトジン同様、小規模で手作りされた、クラフトマンシップに則り作られたコーラとでも言いましょうか。

▼ キハダの果実を入れたクラフトコーラ。
クラフトコーラはご当地色を生かしたものもあります。

 そもそも、コーラ、コカ・コーラがどんな風に誕生したか、そこにもハーブ・スパイスにまつわる大変興味深いストーリーがあります。発祥は、19世紀末のアメリカです。薬剤師ペンバートンという人が、頭痛薬を作ろうとして、インカの聖なる木「コカ(Erythroxylum coca)」の葉を使ったシロップの処方を考えます。ペルーやボリビアでコカは、万能薬として、特に高山病の特効薬として伝統的に利用されて来た薬草です。シロップはコカの成分「コカイン」の効果で、痛みを抑えるのみならず、活力を与える効果があり、大変人気を集めました。ワインに溶かし込み、飲料として売り出されました。しかし、禁酒運動の煽りを受け、アルコール飲料の製造が難しくなり、さらに研究を重ね、完成させたのが、「コカ・コーラ」です。

 コーラとはコーラナッツ、アフリカ原産「コラノキ(Cola nitida)」の果実です。カフェイン、テオブロミンを豊富に含み、現地では強壮剤や下痢止めとして使われてきました。また、カカオ同様、「神様からの贈り物」とされ、宗教的な意味あいも持たれて来たようです。

 当時、コカ・コーラはシロップ(原液)で販売され、炭酸水で割って飲みました。炭酸水にも殺菌効果があるとされ、薬局で売られていました。当然ながら、現在はコカ・コーラにもペプシ・コーラにも、コカインもコーラナッツも含まれず、その処方は厳重企業機密のようです。

 コカ・コーラ、その原点に近い処方は、コカやコーラナッツ+スパイス、柑橘であることが知られています。スパイス中心のコーラシロップは、炭酸水以外にも、お湯やホットミルクで割れば、おいしい冬のドリンクとして楽しめます。マニュアルはなく、手に入るもので工夫するのが楽しそうです。いざ、挑戦してみませんか?

<レシピの例>*シロップ250ml分
・クローブ 4~6粒
・カルダモン 10個
・セイロンシナモンスティック  2本
・スターアニス 1個
・ナツメグ(挽いたもの) 少々
・ブラックペッパー 10粒
・バニラビーンズ 1/2本
・レモン 1個
・三温糖 150g
・黒糖 50g
・水 200ml
*入手できるもの、ご自宅にあるものを活用してください。

▼ すべての材料に水を加えて、鍋で煮立てます。
煮ている時は極上の芳香療法。

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日本園芸協会 指導部 佐々木薫



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佐々木 薫(ささきかおる)
プロフィール:
公益社団法人日本アロマ環境協会認定アロマテラピープロフェッショナル。 NHKをはじめテレビ、ラジオの出演多数。 日本園芸協会の通信教育講座「ハーブコーディネーター養成講座」テキスト執筆者。

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日本園芸協会 学習サービス課 aroma@gardening.or.jp




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