<猫井登のお菓子紀行>
vol.36
イギリス・ロンドン(8)
ロンドン中心部
この「お菓子紀行」では、私:猫井登と、同じくお菓子研究家である妻:Junkoが実際にお菓子の研究のために訪れた国々での体験や旅の様子を交えながら、さまざまなお菓子を紹介していきます。
今回は、イギリスのロンドンの様子です。
J:いよいよ、ロンドンも最後の日ね。
お菓子屋さんが多かったから、食関係で「バラ・マーケット(Borough Market)」も行っておきたいわ。
猫:ロンドンブリッジのすぐ近くにある有名な市場だね。
鉄道の高架下を中心に広がる面白いマーケットだから行ってみようか。
<「バラ・マーケット」にて>
▼バラ・マーケット |
J:肉、野菜から生花まで、いろいろなものが売られているわね。お菓子もたくさん売られているわ!
▼フクロウ型のショートブレッド |
猫:フクロウ型「ショートブレッド」とか、「フラップジャック」とかは、面白いね!
J:ショートブレッドって、ビスケットと何が違うの?
猫:卵が入るか、入らないかだね。入るのがビスケット、入らないのがショートブレッド。基本的に、小麦粉、バター、砂糖を3:2:1の割合で入れる、それから冷たいバターを細かくして粉と合わせる、フランス菓子の製法でいうところの「サブラージュ」の技法で混ぜていく。白いうちに焼くのを止めるというのが特徴だね。
こういう風に、フクロウのかたちにするのは面白いね。
▼フラップジャック |
J:フラップジャックって、どういうお菓子?
猫:まあ、こちらもひとことで説明すると、シリアルバーだな。
材料は、
(1)オーツ麦
(2)バター
(3)ブラウンシュガー
(4)ゴールデンシロップと呼ばれる黄金色の糖蜜
の4種類が基本。
オーツ麦以外の材料を鍋に入れて、火にかけて溶かしたら、あとはオーツ麦を入れて、混ぜ合わせて、型に
平たくのばしてオーブンで焼けば出来上がりだ。
このお店のものは、ほかに生姜を加えているのかな。ほかにも、ドライフルーツやチョコチップを入れたりしたものがあるよ。
日本のシリアルバーと異なるのは食感だな。イギリスでは、かりっとしたタイプより、柔らかくて、ねっちりとした感じのものが好まれるんだよね。日本人からしたら、歯にくっつきそうな感じがするけれど。
さあ、このあとは、どうする?
J:せっかく、アフタヌーンティーの研究に来たのだから、最後はアフタヌーンティーで締めたいわね。
猫:じゃあ、「フォートナムメイスン」の、ひとひねりしたアフタヌーンティーに行こうか。
J:フォートナムメイスン! 紅茶で有名なお店ね!
<「フォートナムメイスン」にて>
▼フォートナムメイスンのアフタヌーンティー |
J:見かけは余り変わらないようだけど、どこが、ひとひねりしてあるの?
猫:一番上の皿から食べてみようか。
J:あら、お菓子ではなくて、サーモンやイワシがのっているわ!
猫:これはね、「セイボリー・アフタヌーンティー」なんだよ。セイボリーとは、塩気のある食べ物のことなんだけど、意訳すると「お食事系アフタヌーンティー」だね。スコーンなんかもチーズ味になっている。
J:なるほど、日本ではアフタヌーンティー=スイーツというイメージがあるけれど、これは面白いわね!
猫:まあ、お惣菜系は「ハイティー」といった方がいいかもしれないけれど。
J:ハイティー?
猫:アフタヌーンティーというのは、貴族がおやつの時間に食べるもの。一方でハイティーは、労働者階級が、紅茶とともに食べた夕食のことを指すんだ。ローテーブルじゃなくて、高さのあるダイニングテーブルで食するから「ハイティー」。
J:同じく「ティー」と付いても、歴史的背景が全く異なるのね。
このアフタヌーンティーで、いよいよロンドン旅行も終わりね。いろいろと勉強になったわ。
ロンドン編 終わり
<お知らせ>
永らくご愛読いただきましたメルマガ「猫井登のお菓子紀行」も、いよいよ次回の総集編で最終回の予定です。総集編では、今までのまとめをしたいと思います。
猫井 登