<猫井登のお菓子紀行>
vol.35
イギリス・ロンドン(7)
ロンドン中心部
この「お菓子紀行」では、私:猫井登と、同じくお菓子研究家である妻:Junkoが実際にお菓子の研究のために訪れた国々での体験や旅の様子を交えながら、さまざまなお菓子を紹介していきます。
今回は、イギリスのロンドンの様子です。
J:今日は、行ってみたいところがあるのだけれど。
猫:どこ?
J:いわゆる、カップケーキ、日本で言うマフィンの専門店に行ってみたいわけ。
「プリムローズベーカリー」とか「ハミングバード」って、レシピ本も出しているお店じゃない?
猫:じゃあ、行ってみますかね!
J:カップケーキとマフィンの違いは何?
猫:イギリスで「マフィン」って言ったら、「イングリッシュ・マフィン」が出て来るんじゃないかなあ。イングリッシュ・マフィンというのは、イースト生地で発酵させた生地にコーンミールをまぶして、焼いた円形の平べったいパンだよ。
日本で、マフィンと言われているのは「アメリカン・マフィン」のことで、パウンドケーキのような生地をカップ状の容器に入れて焼いたものだね。こちらが一般に「カップケーキ」と呼ばれるもので、もともとは第二次世界大戦後に、大量生産しやすいように考案されたものだね。
イギリスでも、「cupcake」と呼ばれるのが一般的で、種類ごとに略して「〇〇cup」と呼ばれることもあるよ。
<「プリムローズベーカリー」にて>
▼「プリムローズベーカリー」のカップケーキ |
J:上にかかってるシュガーフロスティング(糖衣)が可愛いわね!
猫:キャロットケーキも売っているね。
<「ハミングバード」にて>
▼「ハミングバード」のカップケーキ |
▼ウーピーパイ |
J:プリムローズベーカリーは、ポップな感じだったけれど。こっちはちょっとシックな感じね。
ショーケースの上にのっている、ブッセみたいなものは何かしら?
猫:あれは、ウーピーパイだね。
J:ウーピーパイって??
猫:あれは、もともとアメリカ発祥のお菓子だね。「ウーピー」っていうのは、「いやっほー」って感じの言葉で、お弁当箱にこのお菓子が入っていると、「やったー」みたいに喜んだので、この名が付いたと言われるけどね。
その起源は、ペンシルベニア州などに居住するドイツ系移民の人々で、移民当時の生活様式を保持するアーミッシュの奥さんがケーキ生地とフロスティングの残りからウーピーパイを作ったという説がある。または、1925年にメイン州ルイストンのベーカリーが作ったという説もあるよ。
J:今日はカップケーキを堪能したから、夜は伝統的な「フィッシュアンドチップス」を食べにいかない?
猫:いいよ。それじゃ、ちょっとパブに行こうか。
<パブにて>
猫:さあ、「フィッシュアンドチップス」とビールを注文しようか。
▼フィッシュアンドチップス |
J:「フィッシュアンドチップス」って、要は「白身魚のフライ」と「ポテトフライ」だけど、いつ頃からあるのかしら?
猫:それぞれ別々には、昔からあったわけだけど、1860年頃にロンドンの下町にあったお店がこれら2つをセットにして売り出したのが「フィッシュアンドチップス」の始まりと言われているね。
おりしも産業革命後の工業化の時代で、労働者は安価で、すぐに食べられ、さらに腹持ちの良い食事を求めていたから、イギリスの工業化の進展とともに広く浸透していったんだよ。
さあ、食べようか!
J:時流にのった食べ物だったのね。
つづく