<猫井登のお菓子紀行>
vol.32
イギリス・ロンドン(4)
ロンドン中心部
この「お菓子紀行」では、私:猫井登と、同じくお菓子研究家である妻:Junkoが実際にお菓子の研究のために訪れた国々での体験や旅の様子を交えながら、さまざまなお菓子を紹介していきます。
今回は、イギリスのロンドンの様子です。
前回からのアフタヌーンティー講習の続きです。
J:アフタヌーンティーにつきものの、スコーンって、いつ頃からあるんですか?
▼スコーン |
先生:もともとは、粗挽きの大麦粉を使って焼いた「バノック(Bannock)」というパンが起源とされているけれど、今のようなかたちになったのは、オーブンとベーキングパウダーの普及した19世紀半ばね。
J:「スコーン」って、もともと、どういう意味なんですか?
先生:スコットランドの古い言葉のゲイル語「sgonn」が語源で「一口大」という意味だという説と、スコットランドにある「スコーン城」にある、歴代国王の戴冠式に使われた椅子の土台の石がTHE STONE OF SCONE」と呼ばれていて、それに由来するという説があるわね。
J:スコーンって、どんな風に作るのが正解なんでしょうか?
先生:う~ん、家庭ごとに作り方があるから、どれが正解というのは、難しいけれど、大きく分けて、ビスケットみたいなタイプとパンみたいにふんわりとしたタイプがあるかしら。
さっきも説明したように、もともとはパンなので、発酵させる代わりにベーキングパウダーを使ったとも考えられるわ。私は、パンみたいに中をふんわりさせたものにするわね。
J:上手なスコーンというか、成功の目安とかありますか?
先生:スコーンが焼き上がったときに側面に割れ目が出来ているといいとは言われるけれど。俗に「 Wolf's Mouth(狼の口)」と呼ばれているわね。
▼狼の口 |
J:なぜ、割れるのでしょうか?
先生:パイと同じ原理じゃないかしら。パイは冷たいバターを入れて折って層状にするでしょ。スコーンも、冷たいバターの塊をカードで細かく切って、粉と合わせていくので、焼いたときにバターが溶けて、水蒸気が膨張して膨らんで割れるの。
まあ、いろいろな作り方があるから、別に割れなくても悲観することはないのよ。
J:スコーンに付いてくる、「クロテッドクリーム」って、どんなものなのでしょうか?
先生:「クロテッド(Clotted) 」とは、「凝固した」という意味で、牛乳を煮詰めて、一晩寝かせて、表面で凝固した乳脂肪分を集めたものね。
乳脂肪分が、生クリームが40%前後であるのに対して、クロテッドクリームは60%前後だといわれるから、まあ生クリームとバターの中間的な感じね。
イギリスのデヴォン州やコーンウォール州あたりでは、ずいぶん昔から作られているわね。
J:クロテッドクリーム以外に、スコーンには何をつけますか?
先生:基本的には、いちごジャムね。あとは、ベリー系でラズベリーとかブルーベリー、ブラックベリーとか。オシャレにするなら、バラのジャムとか。今日はレモンカード(Lemon curd)を用意しておいたわ。
▼写真左奥から右にクロテッドクリーム、レモンカード、いちごジャム、左手前の円形のケーキがヴィクトリアサンドイッチケーキ |
J:レモンカード? レモンジャムとは違うのですか?
先生:レモンバターとかレモンクリームとかと言った方がわかりやすいかも知れないわね。
レモンの果汁、バター、卵、砂糖を合わせたものね。レモンカードの「curd」とは、「凝固した」という意味ね。イギリス人は、レモンカードが大好きなのよ。
J:アフタヌーンティーにつきものの、お菓子について教えてください。
先生:ヴィクトリアサンドイッチケーキ(前の写真参照)、バッテンバーグケーキ、フルーツケーキ、レモンタルト、ブラウニー、最近はイギリス以外のお菓子で、マドレーヌ、マカロン、フロランタン、カップ入りのムースとかも増えたわね。
J:ヴィクトリアサンドイッチケーキとは?
先生:ヴィクトリア女王ゆかりのケーキで、パウンドケーキのようなちょっと重めのスポンジケーキの間にジャムとクリームを挟んだものね。厚めにスポンジを焼いて横半分に切るものもあるけれど、イギリスでは、二枚のスポンジを焼くように浅めの丸い型が2つセットで売られているわ。
J:バッテンバーグケーキとは?
▼バッテンバーグケーキ(左手前) |
先生:切り口がピンクと黄色の市松模様の伝統的なケーキね。1884年、ヴィクトリア女王の孫娘とドイツのバッテンバーグ王子との結婚を祝して創作されたと伝えられているわ。
J:アフタヌーンティーの軽食やお菓子を食べる順番って、ありますか?
先生:基本的には、ケーキスタンドの下から上へ、サンドイッチ→スコーン→お菓子の順番ね。
<教室が終わって>
J:なかなか多くのことを教えてもらえたわね。
猫:それじゃあ、次はお店でアフタヌーンティーを体験してみようか。
つづく