<猫井登のお菓子紀行>
vol.29
イギリス・ロンドン(1)
ロンドン中心部
この「お菓子紀行」では、私:猫井登と、同じくお菓子研究家である妻:Junkoが実際にお菓子の研究のために訪れた国々での体験や旅の様子を交えながら、さまざまなお菓子を紹介していきます。
今回からは、イギリスのロンドンの様子です。
▼成田空港からヒースロー空港までは 9時間以上かかる |
猫:あと少しで、ロンドンのヒースロー空港に到着するよ。
J:イギリスのお菓子は、フランスのお菓子とは、けっこう違うから楽しみだわ。
今回は、アフタヌーンティーの研究に重点を置くのよね?
猫:そうだね。個人のお宅にアフタヌーンティーのレッスンも受けに行く予定だよ。
J:面白そう!
<朝、ホテルにて>
▼ホテルの豪華なレストラン |
J:これはまた豪華な部屋ね!
猫:マーガレット・サッチャー首相が晩年を過ごしたホテルだからね。
J:イギリスの朝食って、どんな感じなのかしら?
猫:イングリッシュ・ブレックファストは、「フル・ブレックファスト」とも呼ばれていて盛りだくさんだよ。一般的には…
・卵(目玉焼きかスクランブルエッグ)
・ベーコン、ソーセージ、ハム
・トマト、マッシュルーム、ベイクドビーンズ(トマトソースで煮込んだ白インゲン豆)
・ブラック・プディング
がワンプレートにのって、これにパン(トーストなど)、紅茶かコーヒー、ジュースが付く感じかな。
全ての食材に火を通すことから、フライアップ(fry-up)と呼ばれるね。
J:ブラック・プディングって何?
猫:一言でいうと、血入りのソーセージだね。血を入れるから色が黒くなるわけ。フランスだと「ブーダン・ノワール」って呼んでいるものだね。
J:朝からすごいわね! 毎朝そんなもの食べて、もたれないのかしら!?
▼手前から時計回りにスクランブルエッグ、 ソーセージとベーコン、トマト、 ブラック・プディング がのったフル・ブレックファスト |
猫:そこにこそ、アフタヌーンティーが生まれた理由があるんだよ。軽めの朝食をとって、昼食もとるような食習慣であれば、あまり問題はなかっただろうけど、当時の貴族の朝食は、今朝のような重いものだった。それで昼は抜きにして、その上、夕食はオペラ鑑賞など夜の社交が終わってから遅い時間だったので、昼下がりに軽食をとる習慣が生まれたわけだ。
J:イングリッシュ・ブレックファストがアフタヌーンティーを生む原因になったということ?
猫:そうだ。だから、本格的なイングリッシュ・ブレックファストがどんなものかを体験すべく、このホテルを選んだ。これが分からないと背景が十分に理解できない。
J:なるほど。納得。
日本のアフタヌーンティーでは、お菓子もいろいろとのってくるけれど、本場のものも、お菓子は登場するのよね?
▼日本のアフタヌーンティーのケーキスタンド |
▼マカロンやロールケーキなど、 いろいろな国のお菓子がのせられている |
猫:日本だと、だいたい3段のケーキスタンドで登場して、内容はさまざまで、マカロンやらロールケーキなど、いろいろな国のお菓子がのせられているけれど、当然イギリスのものは、さまざまな点で異なる。
だからこそ、それを見に、わざわざイギリスまでやってきた。日本型のアフタヌーンティーを思い浮かべながら、何が違うのか対比してみよう。
J:どんな違いがあるのか、楽しみだわ。
猫:アフタヌーンティーの講習は午後からだから、朝ご飯を食べ終えたら、せっかくだからバッキンガム宮殿の衛兵交代式を見に行こうか。
J:バッキンガム宮殿って、エリザベス2世が居住されていた王宮よね?
猫:そうそう。もともとは、バッキンガム公が18世紀に建てたバッキンガムハウスという私邸だったらしいけれどね。その後、イギリス国王が譲り受け、長い間かけて王宮へと改装した。
J:「衛兵交代式」って?
猫:バッキンガム宮殿を警護する衛兵(オールドガード)が、ウェリントン兵舎から来る衛兵(ニューガード)と交代する儀式だね。
世界中からの大勢の観光客が見に来る、有名なイベントだね。
J:早めに行って、良く見える、いいポジションに陣取りましょうよ。
猫:了解!
▼バッキンガム宮殿の衛兵交代式 |
つづく