Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のお菓子紀行>

vol.27
オーストリア・ウィーン(7)
ウィーン中心部

この「お菓子紀行」では、私:猫井登と、同じくお菓子研究家である妻:Junkoが実際にお菓子の研究のために訪れた国々での体験や旅の様子を交えながら、さまざまなお菓子を紹介していきます。
今回は、オーストリアのウィーンの様子です。

J:研修6日目。今日は「カロッテントルテ」ね! いわゆる「キャロットケーキ」ね。
ケーキに野菜を入れるって、なんか不思議な感じがするけれど、一般的なのかしら?

猫:ニンジンというのは、野菜の中でも糖度が非常に高いとされていて、砂糖が貴重品だった時代、甘味をつけるには便利な素材だったのだと思うよ。

J:なるほど! 甘味をつけるためにニンジンを入れたわけね。それなら納得。

先生:まず、卵黄に砂糖と、シナモンなどのスパイス、ラム酒などを混ぜていきます。
一方で、卵白と砂糖でメレンゲを泡立てます。
小麦粉、ベーキングパウダー、アーモンドパウダー、ニンジンのすりおろしを入れて、メレンゲも加えて、全てを混ぜていきます。
オーブンで、170℃で約45分、焼成します。


▼生地には大量のニンジンのすりおろしを入れる

J:結構な量のニンジンを入れるわね! お菓子作りと言うより料理しているみたい。

猫:そりゃまあ、キャロットケーキだから(笑)。

先生:生地が出来上がったら、横三段に切って、赤スグリのジャムを塗っていきます。
上から、全体にフォンダンをかけて、側面にスライスアーモンドを飾って出来上がりです!


▼全体にフォンダンをかけて
側面にスライスアーモンドを飾る

▼生地の断面を見ると、三段に切って
赤スグリジャムが挟んであることが分かる

J:ニンジンにスパイスに、赤スグリ、フォンダン…。ヨーロッパのお菓子って感じね。
こちらでは、人気があるのかしら?

猫:カフェではいろいろなタイプのものが置いてあるから、人気があるんじゃないかな。

J:そうなんだ。実習が終わったら、カフェに行ってみない?

<カフェにて>


▼カフェのカロッテントルテ

J:ホントだ! キャロットケーキがちゃんとある。これは土台はムースかしら。
マジパンで作ったニンジンがのっていて可愛いわね。

猫:さあ、ウィーンにいる期間も残り少なくなってきたから、代表的な料理で夕食にしようか。

J:賛成!

猫:まずスープは、フリッターテン・ズッペ(Frittaten suppe)にしようかな。


▼フリッターテン・ズッペ

J:どんなスープなの?

猫:分かりやすく言うと、短冊状に細く切れられたクレープを具材としたコンソメスープのことだね。
短冊状のクレープが麺のようで、「きしめん」みたいというか。ウィーンの一般家庭でもよく作られている料理で、日本人にとっての味噌汁のような感覚で飲まれるスープだね。 スープは、お店によってビーフコンソメであったり、チキンコンソメであったりするね。

J:メインはどうする?

猫:シュニツェルでいきますか?


▼シュニツェル

J:いいわね。シュニツェルって、薄い紙カツみたいなものだけど、豚肉じゃなくて子牛の肉を叩いて薄くするのよね。ものすごく細かくしたパン粉をつけて、多めのバターを入れて揚げ焼きにみたいにして作るのよね。

猫:今ではウィーンの代表的な料理となっているけれど、元々は北イタリアの料理で、15世紀頃に伝わったとか、18世紀頃にイタリアに遠征したオーストリアの将軍がレシピを持ち帰ったとか、いろいろな説があるよね。

つづく

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。
日本創芸学院「コーヒーコーディネーター養成講座」テキスト「コーヒーショップの経営」について執筆を担当、「飲食店開業セミナー」講師も務める。

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