Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のお菓子紀行>

vol.21
オーストリア・ウィーン(1)
ウィーン中心部

この「お菓子紀行」では、私:猫井登と、同じくお菓子研究家である妻:Junkoが実際にお菓子の研究のために訪れた国々での体験や旅の様子を交えながら、さまざまなお菓子を紹介していきます。
今回は、オーストリアのウィーンの様子です。

成田からオーストリアのウィーンまで直行便で約12時間のフライト。ウィーン国際空港を経て、現地時間の夕刻、中心部にあるホテルに到着しました。

J:今回はオーストリアのウィーンね。ベルギーやフランスのアルザスとはずいぶん雰囲気が違うわね。

猫:オーストリアの面積は日本の北海道と同じくらいで、国土を東西に横断するようにドナウ川が流れている。南に連なるアルプス山脈など自然豊かな国で、紀元前より人が住んでいたと言われているけど、やっぱり絶大な影響を与えているのは、13世紀後半から約640年間中欧に君臨したハプスブルグ家だね。
歴代の皇帝が音楽を愛したことから「音楽の都」として有名だけれど、ハプスブルグ家の人々がスイーツ好きだったことから、素晴らしいスイーツが多くある。カフェもたくさんあるしね。

J:今回の旅では、工房でお菓子作りも習うのよね?

猫:そうそう。今まで習ってきたフランス菓子とは違った生地や製法も多いので、それを実際に工房で教えてもらおうと思っているんだよ。

J:うわぁ、楽しみ!
ところで、お腹空かない? どこかに夕食を食べに行きましょうよ!

<レストランにて>

J:良さげなレストランがみつかってよかったわね。
何を食べる?

猫:気をつけないと、量が多いからなあ。スープとメインを注文してシェアして食べようか。
あっさりとしたコンソメスープと豚肉も入ったクリームパスタのようなものにしよう。


▼コンソメスープ

▼レーバークネーデルズッペ

J:このスープ、中に大きなおだんごみたいなものが入っているけど??

猫:これは「レーバークネーデルズッペ」。まあ、直訳するとレバーだんご入りスープだな。牛レバーのひき肉にパン粉を加えてだんごにしたものをコンソメスープに入れたものだよ。ウィーンでは家庭料理としてもよく登場する一品だよ。

J:レバーの臭みがしっかりと取り除かれていて、くせが無く食べやすいわね。
スープでいきなり、ガツンと来るわね。昼ならこれとパンで充分ね。

猫:まだまだ、このあとメインが来るよ。

J:メインは何を頼んだの?


▼シュペッツレと豚肉のクリーム煮

猫:「シュペッツレ」と豚肉のクリーム煮といったところかな。

J:「シュペッツレ」って何?

猫:日本ではドイツ風パスタとして紹介されることが多いかな。イメージ的には、パスタというよりも、小麦粉と卵、あとは牛乳や水を加えて柔らかくした生地を茹でた「すいとん」みたいな感じかな。肉料理の付け合わせやグラタンみたいにして食べることが多いと言われているね。

J:うわぁ。お鍋いっぱいに来たわね!

猫:シュペッツレをにんじんやインゲンなどの野菜と一緒に、にんにくを効かせたクリームソースであえたものの上にポークソテーをのせて、さらにソースをかけたという感じだね。

J:けっこうなボリューム。シュペッツレは、柔らかくて、もっちりとした食感ね。たしかにすいとんっぽいかも。

猫:最後は、簡単なデザートの盛り合わせを一人前だけとったけど。


▼デザートの盛り合わせ

J:もう、一人前で十分ね。

猫:リンゴ、オレンジ、ぶどうなどのフルーツのほかに、ナッツのアイスクリーム、いろいろなケーキの生地のスライスがのっている感じかな。個別名まではわからないなあ。

J:中央の生クリームがとっても美味しいわ。砂糖を加えずにホイップしてあるわね、軽やかだけど、コクがあってとっても美味しいわ。

猫:こちらでは、トルテに無糖の生クリームのホイップを添えることが多いね。
さあ、お腹も一杯になったし、明日以降に備えて今夜は早く寝ようか。

つづく

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。
日本創芸学院「コーヒーコーディネーター養成講座」テキスト「コーヒーショップの経営」について執筆を担当、「飲食店開業セミナー」講師も務める。

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