Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のお菓子紀行>

vol.20
フランス・アルザス地方(6)
コルマール、ストラスブール

この「お菓子紀行」では、私:猫井登と、同じくお菓子研究家である妻:Junkoが実際にお菓子の研究のために訪れた国々での体験や旅の様子を交えながら、さまざまなお菓子を紹介していきます。
今回は、フランスのアルザス地方のコルマールとストラスブールの様子です。

<コルマールにて>

J:今日はね、コルマールで一軒行きたい店があるんだけど。

猫:「GILG」でしょ? ルレ・デセール(※)会員の店で有名だもんね。今日は、いろいろとアルザスの有名店を巡ってみよう。

※ヨーロッパを中心とした高級菓子店の代表者の集まり。より質の高い菓子を作るために、技術的な意見交換をする目的で設立された。世界最高峰の洋菓子グループとも評される。vol.17参照。

J:やったあ!


▼GILG

J:さすが、入り口の左横にしっかりと「ルレ・デセール」の表示が出ているわね。

猫:まあ、ルレ・デセール会員のお店を専門にお店巡りをする人もいるからね。
あらためて、「ジャック」のジェラール・バンヴァルト氏のことを思い出すよ。

J:なんか、イモムシみたいな大きなお菓子があるんだけど、これは何?


▼ラングロフ

猫:これは「ラングロフ」だな。

J:ラングロフ? 聞かないお菓子ね?

猫:わかりやすくいうと、クグロフの変形バージョン。同じクグロフのかたちばかりではつまらないから生まれたというけれど、結構生地も違ってきている。発酵生地という点は同じでレーズンが入っているのも同じだけれど、スパイスが加えられていたり、少し味わいが違うね。店ごとに色々とバリエーションがあるのかも知れないけれど。クグロフ型とは異なる専用の型も売られているよ。


▼ラングロフ型

J:へぇ~、クグロフの変形バージョンか、現地に来ないとわからないわね。

<ストラスブールにて>

▼Jean-Claude ZIEGLER

J:「Jean-Claude ZIEGLER」ね!
たしか、3つ星レストランでシェフパティシエをやっていた人のお店よね。
ケーキが華やかだわ。

猫:こちらのお店では、伝統菓子はほとんどなくて、シェフの創作菓子が多いのが特徴だね。
パープルとか、日本ではあまり見かけない色合いのケーキがあって面白いね。いくつか買って行こう。

▼Jean-Claude ZIEGLERのケーキ

J:日本では見ない構成と色合いね。これは独創的ね。

▼Kubler

猫:さあ、ここはわかるよね?

J:「Kubler」。浅見シェフ(※)がいらっしゃるお店ね。日本から訪ねてくるお客さんが多いわね。

※現在は東京巣鴨の「パティスリー ヨシノリアサミ」のオーナーシェフ。
この旅行の当時は、ドイツやフランスで開催された複数のコンクールで優勝や準優勝という成績を収められ、2011年には、フランスの職人達にとって最高の栄誉であるM.O.F.(フランス国家最優秀職人章)審査のグラシエ(アイスクリーム・氷菓職人)に挑戦され、ファイナリストに残る快挙を遂げられた。

▼Kublerのケーキ

猫:こちらは、緻密に作られていて、日本的な几帳面さが感じられるね。浅見さんがいるからかな。
デザインは可愛らしいものが多いね。

J:やっぱり、いろいろなお店のお菓子を見ると勉強になるわね。

<旅の最後に>

猫:今日で、アルザスの旅も終わりだけれど、どうだった?

J:同じフランスでも、パリとはずいぶん様子が違ったわね。来てみないと見られないお菓子もたくさんあったし、勉強になったわ。

猫:そうだね。また、いろいろな国のお菓子を見に行こう。

フランス・アルザス地方編 おわり

次回からは「オーストリア・ウィーン」の旅の様子をご紹介していきます。お楽しみに!

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。
日本創芸学院「コーヒーコーディネーター養成講座」テキスト「コーヒーショップの経営」について執筆を担当、「飲食店開業セミナー」講師も務める。

◇◇◇

このメルマガは、日本創芸学院の「お菓子づくり講座」をご受講いただいた方にお送りしています。

お問い合わせ:学習サービス課 swinfo@sougei.co.jp

※お問い合わせの際は、必ず「お名前(フルネーム)」と「メルマガを受信したメールアドレス」を添えて、お知らせください。





Back Number
バックナンバーはこちら