Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のお菓子紀行>

vol.18
フランス・アルザス地方(4)
コルマール・ニーデルモルシュヴィル村、ストラスブール

この「お菓子紀行」では、私:猫井登と、同じくお菓子研究家である妻:Junkoが実際にお菓子の研究のために訪れた国々での体験や旅の様子を交えながら、さまざまなお菓子を紹介していきます。
今回は、アルザスのコルマール・ニーデルモルシュヴィル村、ストラスブールの様子です。

J:今日は、「ジャムの妖精」として名高いフェルベールさんのお店に行くのよね?
どうやって行くの?

猫:ストラスブールからコルマールまでは、電車で45分くらい、まあこれは問題ないのだけれど。
そこからが大変で、ニーデルモルシュヴィル村まで行くバスが、平日でも1日4本しかないんだよね。帰りも3本くらいしかなくて、13時くらいのバスを逃すと、次は17時だな。

J:乗り遅れたら、大変じゃない! 早く行きましょう!


▼フェルベールさんのお店

J:本当に、村の中にお店がここ1軒しかないのね! びっくり!

猫:ニーデルモルシュヴィル村には、フェルベールさんのお店が唯一のお店ということで、パティスリーというよりは、よろず屋さんだね。雑誌やフルーツ、食器なんかも売っているね。村の人にとっては、お菓子屋というよりは、生活必需品のお店なんだろうね。

J:フェルベールさんって、どういう人なの?

猫:季節ごとのアルザス地方で収穫される果物を使ったフルーティーなコンフィチュールが、フランスの名シェフのジョエル・ロブションや、パティシエのピエール・エルメ氏などから絶賛されて注目を浴びた女性だね。
学校卒業後、ベルギーのブリュッセルで修業して菓子職人として道をスタートさせ、1979年にはフランス青年菓子職人パリ大会で優勝し、1998年には当時の有名飲食店格つけガイドブック『シャンペラー』とパティシエ連盟による1998年度最高のパティシエ賞を受賞。同年クグロフ・コンクールで最高賞「マリアンヌ」受賞。
1999年には、チョコレートの格つけ審査で権威ある愛好会C.C.C.(Club des Croqueurs de Chocolat→直訳すると「チョコレートをかじる人たちのクラブ」…)の審査で4つ星も獲得していて、パティシエールとしても、ショコラティエールとしても輝かしい経歴を持つ人だよ。

J:すごい人なのね!
わあ~、棚にジャムがいっぱい! いろいろ買って帰ろうっと。


▼フェルベールさんのジャムが棚にいっぱい

<ストラスブールにて>

J:なかなかの強行軍だったわね! お腹すいちゃったわ。なにか食べましょうよ!
面白い看板が出ているわよ!


▼フォアグラを売るお店の看板

猫:あれはガチョウかアヒルだな。きっとフォアグラのお店だね。昔は文字が読めない人も多かった からね。字が読めない人でも、なんのお店かわかるような看板を出していたんだよ。

J:フォアグラって、ガチョウやアヒルにいっぱい餌を与えて、肥大化させた肝臓のことよね。

猫:ま、わかりやすくいうと脂肪分の多い濃厚なレバーだな。

<レストランにて>

▼アルザス名物「タルト・フランベ」

▼アルザスのワイン「ゲヴュルツトラミネール」

猫:せっかくだから、アルザス名物の「タルト・フランベ」を頼んでみようか。あとアルザスのワインの「ゲヴュルツトラミネール」も頼んでみよう。

J:「タルト・フランベ」ってなに?

猫:一言でいうと、アルザス風ピザってところかな。ピザと違って、基本的に生地は長方形で、極薄の生地に酸味のある一種のサワークリームを塗って、玉ねぎやらベーコンをのせて、さっと高温で焼いたものだね。

J:ワインの「ゲヴュルツ…」って、なんか舌を噛みそうな名前だわね(笑)。

猫:「ゲヴュルツ」というのは、ドイツ語でスパイスという意味で、独特の風味の白ワインで、やや辛口だね。クグロフはちょっと乾燥した感じで口の水分を奪われるから、甘口ワインよりも、量が飲める「ゲヴュルツトラミネール」の方が相性が良いとされているんだ。

つづく

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。
日本創芸学院「コーヒーコーディネーター養成講座」テキスト「コーヒーショップの経営」について執筆を担当、「飲食店開業セミナー」講師も務める。

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