Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のお菓子紀行>

vol.12
ドイツ(3)
ローテンブルグのクリスマスマーケット

この「お菓子紀行」では、私:猫井登と、同じくお菓子研究家である妻:Junkoが実際にお菓子の研究のために訪れた国々での体験や旅の様子を交えながら、さまざまなお菓子を紹介していきます。
今回訪れているのはドイツのローテンブルグです。

J:ローテンブルグのクリスマスマーケットは、「世界一可愛い」と言われているのに、吹雪になってしまったわね。

猫:雪で真っ白になって、何も見えなくなってしまったね。まあ、こんなときは、さっさとカフェにでも入って、お菓子でも食べよう!

J:ローテンブルグで狙っているお菓子はあるの?

猫:まずは、シュネーバルだなあ。


▼シュネーバル

J:どんなお菓子なの?

猫:英語でいうと、スノーボール。直訳すると「雪の玉」だね。平たく伸ばした生地に切れ目をいくつもいれて、くしゃくしゃと丸めて揚げたお菓子だね。いろいろな大きさがあるけど、大体ソフトボールの玉ぐらいの大きさが主流だね。300年くらい前からあるお菓子で、フランケン地方では、結婚式とか、お祝いごとのときに作られてきたんだ。フレーバーとしては、シンプルに粉砂糖を振りかけただけのものから、チョコレート掛けしたものやナッツをまぶしたものまで、いろいろなバリエーションがあるよ。

J:へぇ~、日本では見かけたことのない、変わったお菓子だわね。私も1つ頼んでみようっと。

猫:おっ、フランクフルタークランツもあるな。あれも頼もう。

J:じゃあ、私は、シュヴァルツヴァルダーキルッシュトルテね。

<カフェの席で>


▼フランクフルタークランツ

J:フランクフルタークランツっていうのは、フランクフルトのお菓子なの?

猫:そうだね。フランクフルトは、かつて神聖ローマ皇帝の戴冠式が行われた場所で、丸い形は王冠を、「クロカント」と呼ばれるナッツのトッピングは黄金色を、チェリーは王冠を飾るルビーを表しているといわれるね。1735年の文献にも記されているという伝統菓子だよ。バタークリームを使った古典的なケーキだね。

J:へぇ~、王冠のケーキかあ、そう聞くと、なんか豪華ね。
シュヴァルツヴァルダーキルッシュトルテは、黒い森のさくらんぼのケーキよね?


▼シュヴァルツヴァルダーキルッシュトルテ
(さくらんぼケーキ)

猫:そうだね。ドイツのシュヴァルツヴァルト地方の黒い森とその地方の特産品であるキルッシュ(サクランボ酒)にちなんで作られたケーキだね。サクランボ酒をたっぷりと浸み込ませたチョコスポンジ生地に、生クリームとサクランボをはさんである。森に積もった雪に見立て、生クリームを塗り、雪の上の落ち葉に見立てて、チョコレートをその上に削り、サクランボを飾るのが定番のデコレーションだね。オーストリア、スイスなどでも見られるし、フランスでも「フォレノワール(黒い森)」の名で親しまれているね。

J:シュネーバルは、揚げてあるというから、カリカリしているのか思いきや、ちょっとしっとりとして、ビスケットのようでもあるわね。ちょっと、吹雪もおさまってきたから、外にでましょうか?

<中央広場にて>

J:ほかの町に比べると、ずいぶんこじんまりとしているわね。

猫:たしか、人口12,000人くらいだったと思うよ。

J:あそこに、クリスマスの飾りをたくさん売っているお店があるみたいよ!

猫:「ケーテ・ウォルファルト」だね。一年中、クリスマスグッズを売っているお店として有名だよ。

J:このお店では、一年中、クリスマスなのね。なんか素敵ね。

つづく

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。
日本創芸学院「コーヒーコーディネーター養成講座」テキスト「コーヒーショップの経営」について執筆を担当、「飲食店開業セミナー」講師も務める。

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