<猫井登のお菓子紀行>
vol.10
ドイツ(1)
ドイツのクリスマスマーケット・ドレスデン
この「お菓子紀行」では、私:猫井登と、同じくお菓子研究家である妻:Junkoが実際にお菓子の研究のために訪れた国々での体験や旅の様子を交えながら、さまざまなお菓子を紹介していきます。
今回訪れているのはドイツです。
ベルギーに続いて訪れるのはドイツです。今回はクリスマスの約1か月前から各地で開催されるクリスマスマーケットを取材するのが目的です。成田を出発し、ミュンヘンを経由してベルリンへ。
J:クリスマスマーケットって、何?
猫:12月25日のクリスマスというのは、イエス・キリストの誕生日。ここから逆算して4回の日曜日が入るように計算して、大体1か月前に「アドヴェント」というのが始まる。
アドヴェントというのは「待降節(たいこうせつ)」と訳され、キリストの降誕を待ち望む期間、わかりやすくいうと、クリスマスへのカウントダウン期間。で、その期間中、広場には日本の夏祭りみたいにたくさんの屋台が立つ。これがクリスマスマーケットだね。
J:いつくらいから、あるのかしら?
猫:起源については、諸説あるけど、大体14世紀から15世紀くらいかな。もともとは、クリスマスに備えて、必要なものを、人がたくさん集まる教会前の広場に持ってきて交換したのが始まりとされるね。
16世紀になると、ローマのサン・ピエトロ大聖堂の改修の資金調達のため、当時、神聖ローマ帝国とよばれたドイツのローマ教会では大々的に贖宥状(しょくゆうじょう。免罪符のこと)が販売され、それを求めてより多くの農民が教会に集まるようになった。ドイツでは、どの町でもクリスマスマーケットが開かれるようになり、規模も大きくなっていった。
まあ、一方で贖宥状の販売に批判的な人々も出てきて、いわゆる宗教改革につながっていくわけだけど。
J:ドイツ全体で、どれくらいのクリスマスマーケットが開かれるのかしら?
猫:一説には2,500以上とも言われているね。まあ、とても全部は廻れないので、大きなところを何か所か廻ろう。
J:どのあたりのものが有名なの?
猫:旅行社の宣伝文句だと
「世界最古のクリスマスマーケットのドレスデン」
「世界一可愛いクリスマスマーケットのローテンベルグ」
「世界一有名なクリスマスマーケットのニュルンベルグ」
「世界最大のクリスマスマーケットのシュトゥットガルト」
あたりかな。
今回はこれらに加えてチェコのプラハのクリスマスマーケットにも行く予定だけどね。
J:それぞれのクリスマスマーケットに、キャッチフレーズが付けられているわけね(笑)。
<ドレスデンのクリスマスマーケットにて>
猫:さあ、すっかり夜になってしまったけど、ドレスデンのクリスマスマーケットに着いたよ。1434年から続いているクリスマス市だよ。
▼ドレスデンのクリスマスマーケット |
J:「シュトリーツェル・マルクト」と書いてあるけど、どういう意味?
猫:シュトリーツェルというのは、シュトレンというお菓子の古い呼び方だね。諸説あるけど、シュトレンは、ここドレスデン発祥のお菓子とされているからね。当時からクリスマスにそれを売る市が立っていたということだね。すぐそこに「クロイツカム」という老舗菓子店があるから覗いてみよう。
▼老舗洋菓子店「クロイツカム」 |
▼シュトレン |
J:シュトレンというのは、ドライフルーツやナッツ、マジパンなどを入れた菓子パンのようなものね。
猫:そうそう。焼き上がったらバター液を塗り、たっぷりと砂糖をまぶす。保存がきくから、ゆっくりと熟成させ、毎日少しずつ食べて味の変化を楽しむ。
ふつうは、生地を少しずらして重ねてたような形をしているけれど、ドレスデンのものは、上部中央にさっと切れ込みを入れて、上が割れたような形をしているのが特徴だね。
J:へぇ~。同じシュトレンでも形状が異なるのね。
つづく