Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のお菓子紀行>

vol.09
ベルギー(9)
ベルギー家庭料理とデザート

この「お菓子紀行」では、私:猫井登と、同じくお菓子研究家である妻:Junkoが実際にお菓子の研究のために訪れた国々での体験や旅の様子を交えながら、さまざまなお菓子を紹介していきます。
今回訪れているのはベルギーです。

<ブリュッセルにて>

猫:さあ、最後はブリュッセルのグランプラスで総仕上げをしようか。お土産も買って帰らないとい けないしね。

J:どこか、良いお店はあるの?

猫:とっておきの老舗があるよ!行ってみよう。
1829年創業の焼き菓子店「メゾン ダンドワ」だよ!

J:いかにも老舗っていう感じね。なにが有名なの?

猫:まあ、カフェの方では、ワッフルも食べられるけどね。お土産にするなら、「スペキュロス」とか「クックドディナン」だな。

J:どんなお菓子なの?


▼スペキュロス(画面左)
左手前の白色はバニラ味
その奥の茶色が通常タイプ

猫:まず、スペキュロスというのは、シナモンとかナツメグなどのスパイスが入ったビスケットで、元来は12月6日のサン二コラの日に食べられていたものだね。

J:サンニコラというのは、子供の守護聖人で、サンタクロースのモデルとなった聖人ね。


▼クックドディナン

猫:そうそう。クックドディナンは、ブリュッセルからだと100kmぐらい東南のディナンという町のお菓子だね。もともとは、古代ローマで作られていた、ライ麦粉にハチミツ、羊のチーズなどを加えたビスケットに由来すると言われているけど、中世にディナンで改良され、小麦粉とハチミツだけで作られるようになった。
非常に固くて日持ちするので、15世紀半ばディナンがブルゴーニュの勇胆公に包囲されたとき、城に籠城した人々の食料となり、救ったと言われているよ。
粉とハチミツの割合は3:1で、生地を練ったら木型に押し付けて模様をつけて、300度の高温で4~5分焼いて出来上がり。

J:見事な模様がついたものが、たくさんあるわね! 額に入れて飾っておきたいくらい。

<夕食にて>

J:せっかくだからベルギーの料理とデザートでしめたいわね。


▼シコンのグラタン

猫:じゃあ、ベルギーの家庭料理「シコンのグラタン」と、デザートは「ダム・ブランシュ」にしようか。

J:シコンってなに?

猫:英語だとチコリ、フランス語だとアンディーブと呼ばれているね。蒸し煮にしたシコンをハムで巻いて、ホワイトソースをかけてグラタンにするんだ。マッシュポテトを添えることが多いね。シコンのほろ苦さとハムの塩気が大人の味わいだね。


▼ダム・ブランシュ

J:「ダム・ブランシュ」は、どんなスイーツなの?

猫:簡単に言うと、アイスクリームにホットチョコレートをかけたものだな。1825年にパリで公開された、オペラ「La dame blanche(白衣の貴婦人)」にインスピレーションを得て作られたスイーツだと言われているね。というわけで、もともとは、フランス生まれのデザートなんだけど、今ではすっかりベルギーの定番スイーツになっているね。
たしか、作家の開高健氏が、エッセイかなにかに、ベルギーで食べたダム・ブランシュがすごく美味くて、忘れられないと書いていたような気がするな。

J:よく、そんなことを覚えているわね。

猫:まあ、一度食べてみたいと思っていたからね。
アイスクリームにかけるホットチョコレートは、基本的には、ダークチョコレートに生クリームを合わせて作るんだけど、店ごとにこだわりのレシピがあると言われているんだよ。

J:さすが、チョコレート王国ベルギーね。

猫:さあ、温かいチョコレートが、アイスクリームで冷えて少し固まった頃が食べ頃だよ。

ベルギー編 終わり

次回からは、ドイツを中心とした「クリスマスマーケット」の旅をご紹介していきます。お楽しみに!

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。
日本創芸学院「コーヒーコーディネーター養成講座」テキスト「コーヒーショップの経営」について執筆を担当、「飲食店開業セミナー」講師も務める。

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