<猫井登のお菓子紀行>
vol.06
ベルギー(6)
ベルギーの3大古典菓子とは?
この「お菓子紀行」では、私:猫井登と、同じくお菓子研究家である妻:Junkoが実際にお菓子の研究のために訪れた国々での体験や旅の様子を交えながら、さまざまなお菓子を紹介していきます。
今回訪れているのはベルギーです。
J:ベルギーに来て、ワッフル、チョコレートと見てきたけど、ケーキとかはどうなの?
ベルギー生まれのケーキとかはないの?
猫:それじゃ、今日は、ケーキ屋巡りをしますかね。
J:やったね!
<ケーキ屋の店頭で>
猫:こちらは、ブリュッセルでも有名な1910年創業の「ヴィタメール」というお店の本店だよ。
ベルギー王室御用達のお店で、1999年、ベルギー王室のフィリップ皇太子とマチルダ妃成婚のウェディングケーキを製作したことでも有名だね。
J:大きなお店ね。ケーキがたくさん並んでいる!
猫:ベルギーにも現代的なオシャレなケーキはたくさんあるけれど、まず、押さえるべきは、「ベルギー3大古典菓子」といわれる次の3つだな。
ベルギー3大古典菓子
- メルヴェイユ
メレンゲを生クリームで覆い、まわりに削りチョコレートをつけたケーキ。
フランス語で「逸品」を意味する。
▼メルヴェイユ
- ミゼラブル
ダコワーズに似た生地の間にバタークリームをはさんだケーキ。
バタークリームに合わせるカスタードクリームを作るときに牛乳を買うお金がなく、水で作ったことから「悲惨」という名がつけられたとの説がある。
▼ミゼラブル
- ジャヴァネ
薄いビスキュイ生地とコーヒー風味のバタークリームを交互に幾層にも重ねたケーキ。
ジャヴァネとは「ジャワ島の人」の意味。19世紀頃、ジャワ島は、オランダの植民地であり、コーヒーの栽培が盛んに行われていたので、コーヒークリームを使ったこのお菓子にこのような名がついたといわれる。
▼ジャヴァネ
J:製菓学校で作ったね、「ミゼラブル」! みんなで「貧乏ケーキ」って呼んでた。
しかし、メルヴェイユって、ほとんど生クリームの塊でしょう。胸焼けしそうだけれど、売れるのかしらね?
猫:結構な売れ筋で、3時過ぎには完売することもあるらしいよ。
J:ボンボンショコラ、ベルギーだと「プラリーヌ」と言うわね。そちらもたくさんあるわね!
猫:何か気付かない?
J:さあ?? ちゃんとバロタン箱に入っているけど?
猫:値段の付け方は、どうなっている?
▼販売されている「プラリーヌ」の値札に注目 |
J:500g、31ユーロって、書いてあるけど…。そうか、量り売りなのね!!
猫:そうなんだよ。1粒いくらではなくて、量り売りになっている。いろいろな種類があるけれど、売られるときは、100gいくらの量り売りで、それぞれのチョコレートの個性は無視される。
これに疑問を感じた人がいた。フランスの「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」の創始者のロベール・ランクス氏だ。例えば、ハンドバッグは、1kgいくら、なんて量り売りしないよね? 同じように自分も職人として、1粒1粒精魂込めて作っているのに、どうしてチョコレートは箱に乱雑に放り込んで、量り売りしなきゃいけないのか、もっと丁寧に、高級ハンドバックと同じように扱うべきだと考えた。
で、彼は、高級ハンドバック「エルメス」の箱を作っている工房に自分のチョコレート用の箱を発注、1粒ずつ丁寧に並べて箱詰めにして販売する形式をとった。他の専門店も追随し、ここから、フランスのチョコレートは高級化路線を歩み始まるわけだ。
J:なるほど、フランス製チョコレート扱いが異なるのは、販売方法にあったわけね。
それで、フランスは、高級チョコレートの国として知られるようになったんだ!
つづく