Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のスイーツ面白事典>

vol.55
パネトーネ(1)

先日、ある新聞社から今年のクリスマス菓子についての取材を受けました。

もう?って、思われるかも知れませんが、お菓子屋さんでは、毎年7月くらいには、その年のクリスマスケーキを決定し、とくにケーキの上にのせる飾りの決定をして、発注をかけて、8月くらいには、カタログ用の写真撮影も終了します。

クリスマスケーキの飾りは季節限定商品で、流行もあるので、数量限定のものが多く、問屋さんに早く発注しないと、品切れになってしまいます。なので、早めにデコレーションを決めて飾りを必要数確保した上で、撮影をおこなうのです。

私もまだパティスリーの経営に携わっていたころ、初夏の汗ばむ時期にシェフと一緒に、あーでもない、こーでもないとクリスマスケーキのアイデアを出し合ったものでした。

しかし、当たり前ですが、人間は暑い時期と寒い時期とでは、食べたいものが異なってきます。なので、シェフによっては、寒い時期のお菓子は寒い時期に考える。来年のクリスマスケーキは、その年のクリスマスが終わったら、すぐに考えるというシェフもいました。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、「今年の」クリスマス菓子のお話…
今回は、「パネトーネ」というお菓子について取材されました。

このところの大手百貨店が取り上げるクリスマス菓子の流行を見ていると、長らく続いていた「ブッシュ・ド・ノエル」から「シュトレン」へ移行し、さらに最近では「ベラベッカ」に移りつつあります。

「ブッシュ・ド・ノエル」というのは、丸太のようなかたちをしたロールケーキやムースのケーキでフランスのお菓子。これは有名でよく見かけるので皆さんご存知ですね。

「シュトレン」は、ドライフルーツを入れたコッペパンのような発酵菓子で、仕上げに粉砂糖をまぶしたドイツのお菓子ですね。最近は、クリスマスシーズンになると、パン屋さんなどでも見かけるようになりました。


▼シュトレン


「ベラベッカ」というのは、フランス・アルザス地方のお菓子で、こちらもドライフルーツをたっぷりと使ったお菓子ですが、黒っぽくてナマコみたいなお菓子ですね。これは、まだちょっと馴染みがないかも知れません。


▼ベラベッカ

▼ベラベッカの断面


新聞社としては、フランスやドイツのお菓子が続いたので、そろそろイタリアのお菓子が取り上げられるのでは? と予想を立てたのでしょう。
で、イタリアの代表的なクリスマス菓子である「パネトーネ」に目をつけて取材を申し込んできたというわけです。

…というわけで、しばらくは、今年のクリスマスに流行するかも知れない!? パネトーネの話をしていきたいと思います。

つづく

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。
日本創芸学院「コーヒーコーディネーター養成講座」テキスト「コーヒーショップの経営」について執筆を担当、「飲食店開業セミナー」講師も務める。

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