Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のスイーツ面白事典>

vol.51
フォンダンショコラ(1)

まだまだ寒い日もありますので、温かいデザートの話をしましょう。 「フォンダンショコラ」です!

皆さんは、「フォンダンショコラ」というと、どのようなものを思い浮かべられますか? 多くの方は、「チョコレートケーキで、ナイフを入れると、中からチョコレートが、サーっと溶けだしてくる…」といったものをイメージされるのではないでしょうか。

実際「フォンダンショコラ」と入力してネットで画像検索すると、そのとおりのものが出てきます。
しかし一方で「Fondant au chocolat」とアルファベットで入力して検索すると、中が溶けていない状態の画像も多数出てきます。


▼Fondant au chocolat


▼Moelleux chocolat

つまり、日本人がイメージするものと外国人がイメージするものには違いがあるということです。
ややこしいので、結論を先に言うと、実は「フォンダン・オ・ショコラ」のほかにも「モワルー・オ・ショコラ」「ミ・キュイ・オ・ショコラ」といった呼び方があり、それぞれの呼び名の使い分けが統一されて「いない」ということです。

わかりやすく言うと、
「同じお菓子なのに、国によって、人によって呼び方が違うんだよね〜」ということになります。
 (写真のとおり、フランスで市販されている商品の名称を見ても下の字義とは一致していない)
 …というわけで、とりあえず3つの「字義」の整理をしてみたいと思います。


  1. フォンダン(フランス語ではFondant au chocolat[フォンダン・オ・ショコラ])
    言葉の意味としては「溶解する」「溶ける」という意味ですが、お菓子の世界では、ある程度濃度があり、「とろり」とした感じ、のニュアンスで使われることが多いような気がします。この感じからすると、チョコレートやバター、卵、砂糖などが多く含まれていて、逆に小麦粉は少なめで、味わいも濃厚で重めなもの…というイメージでしょうか。

  2. モワルー(フランス語ではMoelleux au chocolat[モワルー・オ・ショコラ])
    言葉の意味としては「ふんわりした」「柔らかな」という意味で、この感じからすると、小麦粉の配合が多めで、生地に ふんわり感があり、でもまだ、柔らかさもあるというか、串を刺すと生地がまだ少しだけついてくる状態といった感じでしょうか。フランスに行くと、けっこう濃厚な感じのチョコレートの焼き菓子なども「モワルー」の名で売られていて、上記のフォンダンのニュアンスも含んだような感じで使われる言葉です。

  3. ミ・キュイ(フランス語ではMi-cuit au chocolat[ミ-キュイ・オ・ショコラ])
    言葉の意味としては「ミ」=「半分の」「半ばの」、「キュイ」=「焼けた」「煮えた」という意味で、日本で言うと「半焼き」あるいは「なま焼け」「なま煮え」ということになります。
    オーブンでケーキを焼いている途中で、串を刺したら、串にドロドロの生地がまだついてくる感じですね。

つづく

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。
日本創芸学院「コーヒーコーディネーター養成講座」テキスト「コーヒーショップの経営」について執筆を担当、「飲食店開業セミナー」講師も務める。

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