Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のスイーツ面白事典>

vol.49
チーズケーキ(5)

前回、1964年にトップスが「レアチーズケーキ」を、1969年にモロゾフが「ベイクドチーズケーキ」の販売を開始したことを書きました。

実は、1969年にはもう1種、日本人は、画期的なチーズケーキを産み出します。
それは「スフレチーズケーキ」です! これは、当時大阪市にあったホテルプラザの製菓長・安井寿一氏が、翌年の1970年に開催予定であった大阪万博に向けて、試行錯誤を繰り返しながら作り出したものでした。

スフレチーズケーキは、卵白を泡立てたメレンゲを生地に混ぜて焼くため、口当たりはふわふわ。それでいながら、しっかりとした味わい。軽い食感と味わいの両立に相当な苦労があったと言われています。

フランスでは1960年頃から、いわゆるヌーベル・パティスリー(新しい製菓)の波が起こり、お菓子作りは、より新鮮で、軽いものに移行していました。このスフレチーズケーキは、この時代の流れをいち早く取り入れた画期的なものでした。スフレチーズケーキは日本生まれのチーズケーキとして今でも「ジャパニーズ スタイル チーズケーキ」と称されています。

さて、レア、ベイクド、スフレと3種類のチーズケーキが揃い、しかも1970年からクリームチーズが一般家庭用に販売されるようになった中、1971年創刊の雑誌『ノンノ』は、何度もチーズケーキ特集を組み、チーズケーキブームが起こります。

ノンノの特集は、家でチーズケーキを作るものが多かったので、オーブンを使わず手軽に作ることができるレアチーズケーキが、ほかのタイプのチーズケーキよりも人気がありました。
チーズケーキを看板商品に掲げるケーキ店も次々とオープン。

1978年には、今でもチーズケーキで有名な中目黒の「ヨハン」、赤坂の「しろたえ」などもオープンします。1980年代には軽い食感のスフレタイプも人気となり、1984年には大阪で「りくろーおじさんの焼き立てチーズケーキ」の販売が開始され、今なお、人気商品となっています。

1990年にブームとなったティラミスもチーズケーキの一種であることは既に申し上げましたが、1990年に発売され、子供から大人まで幅広く「チーズケーキ」風のお菓子を浸透させたものがあります。なんだか、わかりますか?

「チーズ蒸しパン」です。北海道に本社を持つ日糧製パンの商品が人気となったのをきっかけに、各メーカー、個人店がこぞって販売をおこなったのです。ヤマザキの「北海道チーズ蒸しケーキ」は今なお売れ続けているロングヒット商品です。


▼ヤマザキ「北海道チーズ蒸しケーキ」


2003年に話題となったのが、濃厚な「ニューヨークチーズケーキ」!
グランマシーニューヨークのホールタイプのニューヨークチーズケーキが火付け役として知られています。

つづく

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。
日本創芸学院「コーヒーコーディネーター養成講座」テキスト「コーヒーショップの経営」について執筆を担当、「飲食店開業セミナー」講師も務める。

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