Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のスイーツ面白事典>

vol.46
チーズケーキ(2)

バスクチーズケーキの話のつづきをしましょう。
誰が、最初に日本に紹介したのでしょうか?
これは「カオリーヌ菓子店」のオーナーで、チーズ研究家の「かのう かおり」さんだと言われています。

かのうさんは、もともと東京丸の内の大手企業に勤務するOLさんだったそう。子供時代からお菓子作りが好きで、夜間、製菓学校に通っているときにチーズの美味しさに魅かれたのだとか。チーズやワインの勉強をしたいと、当時新婚だったにもかかわらずご主人を説得して、単身フランスへ!
フランスやイタリアを廻り、農家でヤギの世話をしたり、チーズ店で働いたりと修行を積まれます。

しかし…。以前にこちらでもお話をしましたが、フランスにはチーズケーキというのは、ほとんどないのです。それではと、日本に帰ったかのうさんは、独自のチーズケーキの研究を始められ、通信販売も始められます…(このあたりの話、これから自分でお店を開きたいなあと思っておられる受講生の皆さんは参考にしてくださいね!)。

そんな、かのうさんがバスク地方の美食に注目し、2011年の夏、スペインとフランスにまたがるバスク地方に旅をされたときに出会ったのが、前回紹介した「ラ・ヴィーニャ」のチーズケーキだったというわけです。

帰国された、かのうさんはそのときの様子をブログに綴られるとともに研究を重ね、2011年の秋にはバスクチーズケーキの通信販売を開始!「バスクチーズケーキ」の名がチーズマニアのあいだで知られることになるのです。

お菓子の専門家も注目し、次々と「バスク風チーズケーキ」のレシピを本などで公開していきます。
ちなみに、本講座の講師をされている小嶋ルミシェフも、「サン・セバスチャンのチーズケーキが有名なバルの味を目指して作りました」とされ、2015年、冨澤商店のサイトにレシピを公開され、お店でも「バル風チーズケーキ」として販売されています。

▼小嶋ルミシェフの「バル風チーズケーキ」


https://tomiz.com/recipe/pro/detail/20151104132314

2016年には、カフェでも「バスクチーズケーキ」が登場するようになり、一般に広く知られるようになっていきます。2016年7月には、フジテレビ「なるほど!ザ・ワールド」<2016年夏に「絶対行きたい!ヨーロッパの超人気エリアスペシャル」>中で、サン・セバスチャンを特集し、レポーターが「ラ・ヴィーニャ」を訪れ、チーズケーキを紹介するまでになります。

もともと、「ラ・ヴィーニャ」は、サン・セバスチャンに1959年オープンした、今年で創業60年を迎える家族経営の老舗バル。20年ほど前から、チーズケーキを出すようになり、その味は濃厚で、岩塩などをまぶせばワインとの相性もぴったりとバルの看板メニューになります。2013年には、スペインの新聞でチーズケーキベスト10にランクイン! 世界中からスイーツ関係者が押し寄せるお店となったのです。

ところで、チーズケーキって、いつごろからあるものなのでしょうか?
そもそも原料のチーズはいつ頃、どのように生まれたのでしょうか?
次回からその話をしましょう。

つづく

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。
日本創芸学院「コーヒーコーディネーター養成講座」テキスト「コーヒーショップの経営」について執筆を担当、「飲食店開業セミナー」講師も務める。

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