Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のスイーツ面白事典>

vol.40
パリのお菓子事情(5)

前回、タルトは顧客が欲しい分を切り分けて販売するという話をしました。こういったものは量り売りになるわけですが、フランスではパウンドケーキなども量り売り。

日本の場合、パウンドケーキを作るとき、型に生地を流し込む段階で、キッチリと計量して、すべて一定量の生地を入れて焼くので出来上がりも均一的で、一本いくらと、同じ値段で売られるのが普通です。


もちろんフランスでもチェーン店などでは、日本と同じように売られていますが、個人経営のパティスリーなどでは、全てに異なる値札がついています。これは型に流し込むときに適当に入れるので、焼き上がったものの大きさも重さもマチマチなので量り売りするわけです。

日本人からみると何ともいい加減に思えますが、同じパウンドでも1本1本、個性があって、面白いともいえます。焼き色もさまざまで、うすい焼き色のものから、しっかりと焼かれているものまであります。


包装の方法も、実に簡易で、パウンドなどは紙でくるむだけ。箱などには入れません。生菓子の場合は箱に入れてくれますが、保冷材などはありません。日本のように、遠いケーキ屋さんまでわざわざ買いに行くなどということは想定していません。パンやケーキは家の近所のお店で買うものなのです。

そのせいか、フランスでは「こんなところに!?」といった都心から離れた街角にMOF(フランス国家最高職人章保有者)のお店があったりします。日本では、有名になると、みんな銀座などの都心部を目指すような意識がありますが、フランスではそんなことは関係なしに、自分の故郷や好きなところに出店するのです。街に住んでいる人たちにとってはありがたいことですが、私のように有名店をまとめて訪ね歩こうとする人間にとっては大変です。

日本ではイートインを持つケーキ屋さんが結構ありますが、パリなどでは、カフェやサロン・ド・テ(ティールーム)というのは、ケーキ屋さんとは別業態で、その場で食べることは、ほとんどの場合できません。

パリでケーキ屋さん巡りをする際は、周到な準備が必要です。私の場合、保冷材と保冷バッグを持参し、あちこちの店を廻るようにしています。また、その場で食べたい場合に備えて紙皿、プラスチックのフォークとナイフなども用意。公園などを見つけて食べます。 1日に何軒も廻ると、どれがどれだったか、わからなくなるのでカメラやノートも持って行き、記録していきます。

これだけ国際化し、いろいろな情報が入ってきているように見えても、やはり聞くのと実際に自分の目で見て、体験するのとは大違いです。通信講座で一通り知識を身に付けたら是非、海外に出かけてご自身で体験してみてください。 

パリのお菓子事情 終わり

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。
日本創芸学院「コーヒーコーディネーター養成講座」テキスト「コーヒーショップの経営」について執筆を担当、「飲食店開業セミナー」講師も務める。

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