Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のスイーツ面白事典>

vol.36
パリのお菓子事情(1)

年末ですね。新年から新しい特集を、と思っていましたが、善は急げと年末からスタート!!

「最近、日本でもフランスの専門店が多数あるので、パリのパティスリーに行っても、特に新発見はありません」・・・と言いたいところですが、実は驚くことがいっぱい!!
パリに行って、実際パティスリーを訪ねると多くの違いがあることに気づかされます!

そこで、今回からは、パティスリー、カフェ、サロン・ド・テ、製菓学校、レストラン、さまざまな角度から
パリの実際のお菓子事情をお話ししていきたいと思います。

まず、第1回目は・・・
パリのパティスリーでは、「シュークリーム」は見かけない!?

日本の洋菓子店の定番商品といえば、ショートケーキ、シュークリーム、チーズケーキ、モンブラン・・・
などですが、どれも、パリのパティスリーではあまり見かけません!!

ショートケーキは、もともとイギリスとかアメリカのもので、日本で見られるショートケーキは、日本生まれのお菓子です。パリのパティスリーで見かけないのは、納得がいきますが、シュークリームは、なぜないのでしょうか?

シュークリームというのは、和製語で、フランス語では「シュー・ア・ラ・クレーム」。立派なフランス菓子で、フランス菓子の教本にも載っています。しかし、実際にパリでパティスリーのショーケースではあまり見かけません。もちろん、シュー生地のお菓子が全くないと言っているのではありません。並んでいるシュー菓子のバリエーションが違うと言っているのです。

一番多く見かけるのは、「エクレア」! これはおそらく、どのお店にも並んでいる定番中の定番。 エクレアのバリエーションとして、エクレアを短く絞った「サランボ」や、どんぐり型に絞った「グラン」も よく見かけます。


エクレア以外のシュー菓子としては、「ルリジューズ」。修道女の姿を模したと言われるダルマのように、シュークリームを2つ重ねたものです。最近、日本でも人気の、パイ生地にプチシューを貼りつけた「サントノーレ」は、ホールタイプもプチガトータイプもともによく見かけます。


ショーケースの上に、袋詰めされていたり、量り売りされているのが「シューケット」。小さく絞ったシュー生地にあられ糖をまぶして焼いたものです。ちょっと、珍しいところでは、パイ生地をシュー生地でかたどり、フルーツを並べたマルグリットというシュー菓子も売られています。


これだけ、色々なシューが売られているのに、いわゆるシュークリームをあまり見かけないのは、甘さが物足りないからのようです。エクレアにしてもルリジューズにしても、フォンダンでコーティングされ、シューケットは、中は空洞でもあられ糖がまぶされ、しっかりと甘みを感じられるのに、シュークリームは淡白な味わいなのであまり人気がないのだとか・・・。味が濃いフランス料理のあとのデザートとしてはインパクトが弱いのかも知れません。

つづく

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。
日本創芸学院「コーヒーコーディネーター養成講座」テキスト「コーヒーショップの経営」について執筆を担当、「飲食店開業セミナー」講師も務める。

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