Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のスイーツ面白事典>

vol.33
珍しい菓子型

前回までの、かっぱ橋道具街巡りの話はいかがでしたか?

今日は、私が実際にかっぱ橋道具街で購入して、使っているお菓子の型で、珍しいものを紹介しましょう!

1、マドレーヌ型(販売:お菓子の森、浅井商店など)
現在見かけるマドレーヌの型は、多くが長細い貝の形ですが、このようなかたちの型も売られています。関西の方では、この型を使ったマドレーヌが結構売られていますし、東京でも「銀座コージーコーナー」のものはそうですね。

マドレーヌの誕生には諸説ありますが、聖ヤコブが眠る聖地サンチャゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の道で売られていたという説もあり、ホタテ貝の形の由来については・・
①聖ヤコブが漁村の出身でホタテ貝が家紋だったから
②巡礼者がホタテ貝を皿にして托鉢をし、それがのちに巡礼の通行証になったから
などと言われています。


2、ジャパニーズワッフル型(販売:お菓子の森、新井商店など)
こちらは、日本独自の柏餅みたいな形のワッフルを作るための型です。少し長めの楕円形の生地にクリームを包むようにして仕上げます。スーパーのお菓子売り場で、モンテールのカスタードクリームを挟んだものをよく見かけますが、 実は、あれは、ワッフルの仲間です。
もともとは、あんこを挟んでいたと言われます。


3、ヴィジタンディーヌの型(販売:吉田菓子道具店)
ヴィジタンディーヌは、フィナンシェに似た生地の焼き菓子。日本では、舟形で売られることが多いお菓子ですが、本来は、小花模様のような独特の型で焼くのが伝統的です。

フランスのロレーヌ地方に1610年設立された「聖母訪問会」により作られはじめ、この会の修道女がヴィジタンディーヌと呼ばれたことから、その名がついたと言われます。


4、アニョー型(販売:吉田菓子道具店)
アニョー・パスカル(イースターの仔羊の意味)というお菓子を作る型です。アニョー・パスカルは、日本では、「パン・ド・ジェンヌ」というアーモンドパウダーを入れた、しっとりとした生地で作られることが多いお菓子ですが、本場のフランスのアルザスでは、ビスキュイ生地(別立てのスポンジ生地)で作られます。イースターの季節に登場するお菓子として知られています。クグロフ生地をこの型で焼く場合もあります。


1や2は、ともかくとして、3や4の型も手に入ってしまうというのが、かっぱ橋道具街のすごいところです。

皆さんも是非、珍しい型を見つけてみてくださいね!

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。
日本創芸学院「コーヒーコーディネーター養成講座」テキスト「コーヒーショップの経営」について執筆を担当、「飲食店開業セミナー」講師も務める。

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