Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のスイーツ面白事典>

vol.27
パティスリー巡りのテクニック(1)

いよいよ4月。新学期の季節。パティスリー巡りにもぴったりの季節になりました。 先日、ある新聞社からお菓子の取材を受けたときのこと。記者の方から、お菓子研究家はどのようにお菓子屋さんを見て歩くのか?という質問を受けたので、今日はその話をしたいと思います。


1、情報収集・経路設定はどうする?

私の場合、友人からの口コミ、テレビ、ネットの情報で気になるものがあれば、書きとめて箱に放り込んでおくだけ。まとまった時間が出来てお菓子屋さん巡りをするときに箱をひっくり返して一番行きたい店を選び、あとはその店の近くの店や同じ沿線の店を調べて一緒に廻ります。

▼パティスリー ユウ ササゲ
▼ラ・ヴィエイユ・フランス

ちなみに、先日は京王線の「千歳烏山駅」にある「パティスリー ユウ ササゲ」に行きたかったので、同じ駅の反対側にある「ラ・ヴィエイユ・フランス」にも行くことにして、食べログなどで検索して、その間にある「ル・プティ・ポワソン」のほか「プクガリ」「フロール」といったパン屋さんにも立ち寄りました。途中、駅前を歩いていたら、パン屋さんと美容院が合体したような店舗(トランキーロ・ブレッド)を発見!どうみても一店舗分の間口に左側がパン屋さん、右側が美容院になっています。早速、携帯で調べると、同じ経営で、美容院でパンを食べることもできる?とのこと。パン屋さんと美容院の異業種コラボ!? こういう発見があるのもケーキ屋巡りの楽しみです。結局、千歳烏山駅周辺だけで6~7軒の店を見て廻りました。このように行きたい店を中心にしてルートを作ると一度に多くの店を見られるので効率的です。

お店に行く時間ですが、すぐに売り切れてしまう商品狙いの場合は別として、私は開店後2~3時間してから行くようにしています。開店後すぐの場合は前日のケーキが並んでいる場合があるからです。もちろん品質には問題ありませんし、作った翌日の方が味がなじんで美味しい場合もありますが、やはり生菓子は出来るだけ出来立てを食べたいところ。お店では「アニキ(先に作った分)、オトウト」「先口(センクチ)、後口(アトクチ)」などと呼んで区別しています。


2、パティスリーで何を買う?

よく聞かれるのが、どのお菓子を選べばよいかということ。私の場合は、まずは、「店のスペシャリテ(店の看板商品)」を購入することにしています。スペシャリテはお店のシェフの得意技や想いを表しているからです。次にお店の特徴をつかむために、異なる生地をベースにしたお菓子を購入します。


いつも購入するのが、
①ショートケーキ→ジェノワーズ(スポンジ)、生クリームを確認。
②シュークリーム・パリブレストなど→シュー生地、クレームパティシエール(カスタード)を確認。
③ミルフイユ→パイ生地、クレームパティシエールを確認。
④タルト→タルト生地、ダマンド(アーモンド生地)を確認。
⑤ヴィエノワズリー(菓子パン)→クロワッサン、ブリオッシュ生地などを確認。

クレームパティシエールとは直訳すると「お菓子屋さんのクリーム」という意味で、いろいろなお菓子を作るときに用いられ、文字通り、その店の味の基本になるものですから、まずはこれを使ったお菓子を味わってみるのがその店の特徴を知る近道です。

もちろん行く店すべてでこれだけ買っていたら、持ちきれませんし、予算も続かないので何度かに分けて、行くたびに毎回違ったものを購入するようにしています。

つづく

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。
日本創芸学院「コーヒーコーディネーター養成講座」テキスト「コーヒーショップの経営」について執筆を担当、「飲食店開業セミナー」講師も務める。

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