Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のスイーツ面白事典>

vol.25
クーベルチュール(1)

1月も後半になると、デパートやお菓子店は、バレンタインムード一色ですね。

皆さんの中には、バレンタイン用のお菓子を手づくりされる方も多いでしょう。
そこで、今日はクーベルチュール、つまり「製菓用チョコレート」のお話をしましょう。

この時期、「ゴディバ」「ジャン=ポール・エヴァン」「ピエール・マルコリーニ」などの名称を耳にすることが多いと思いますが、これらは全てボンボンショコラ(一口大のチョコレート)をはじめとした「最終商品」を製造販売しているお店の名称です。

▼クーベルチョコレートの一例、いろいろな形状のものがあります。

このようなお店が商品を製造する際に使用する「材料」としてのチョコレートを製造しているのがいわゆるクーベルチュールメーカーです。車で言えば、トヨタは知られていても、部品メーカーは、ほとんど知られていないのと同様、クーベルチュールの会社名は一般には知られていません。だから、いざ自分でチョコレート菓子を作ろうとすると、「どこの会社のチョコレートを使えばいいのだろうと??」ということになってしまうのです。

そこで、今知っておくべきクーベルチュールメーカーを何社か取り上げ、解説していきたいと思います。


1、ヴァローナ https://www.valrhona.co.jp/

▼ヴァローナ「マンジャリ」の袋詰め。
製菓材料店で見つけてみてください。

たぶん、世界でも最も有名なクーベルチュールのメーカーではないでしょうか。1922年にアルベリック・ギロネというフランスの菓子職人が設立した会社です。1960年にはヴァローナが正式ブランド名となります。余談になりますが、現在、お菓子の世界大会として有名な「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」を創設したのも同社です。

1991年に当社が発売した「マンジャリ」は、フランボワーズやスグリなど、赤いベリー系の華やかな酸味を持つクーベルチュールとして余りにも有名で、今でも多くのパティスリーで愛用されている逸品です。同社は、その後も多くの優れた製品を世に送り出していますが、2012年に発売された「ドゥルセ」は、「ブラック」「ミルク」「ホワイト」に続く「第4番目のチョコレート」として注目されました。キャラメル色をしたその色合いから「ブロンドチョコレート」と呼ばれ、その味わいは、ビスケットの風味とほのかな甘味に続く、芳ばしく豊かなショートブレッドの風味が特徴で、最後にわずかな塩味が感じられます。

このように、高品質で特徴あるクーベルチュールを販売している同社ですが、色々な特徴があるが故に、初心者がいきなり自分の作ろうとするお菓子にマッチした製品を見つけたりするのは難しいかも知れません。またお値段の方もそれなりにしますので、テンパリングを失敗して焦がしてしまった、なんてことになると大変もったいないことになってしまいます。製菓材料店に行くと小分けして売っていることも多いので、まずは色々な種類のヴァローナのクーベルチュールをそのまま食べ比べてみましょう。その中から、ご自分の作ろうとするお菓子に相性の良いクーベルチュールがきっと発見できるはずです。機会があれば、是非「ドゥルセ」も試してみてください。


(つづく)

 

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。
日本創芸学院「コーヒーコーディネーター養成講座」テキスト「コーヒーショップの経営」について執筆を担当、「飲食店開業セミナー」講師も務める。

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