Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のスイーツ面白事典>

vol.15
あんぱんの歴史

突然ですが、問題です!
4月1日は、エイプリルフール。では、4月4日は何の日でしょう?

答えは、「あんぱんの日」です!
・・というわけで、今日はあんぱんの歴史を探ってみましょう。

 
 

あんぱんは、現在の「銀座 木村屋総本店」の創業者木村安兵衛とその次男・英三郎によって考案され、1874年に銀座の店で販売されたのが始まりとされます。

1869年の〈銀座 木村家〉創業当時、日本においてまだパンは普及していませんでした。どうすればパンが食べられるようになるのか。パンは発酵にイースト酵母を使うので、独特の香りがあり、日本人にはすぐに受け入れられそうにありませんでした。

木村安兵衛、英三郎はさまざまな試作を行うなかで、酒種発酵種に出会い、酒種生地が出来上がります。 この生地を使い、「洋」のパンに、日本人になじみ深い「和」のあんを、融合させることを考案します。
こうして生まれたのが画期的な和洋折衷のパンである「あんぱん」です。

パン用の酵母でなく、酒饅頭を作るときに用いる日本酒酵母を含む酒種を使い、しかも、まんじゅうと同じく「あん」を中に入れたことで、パンでありながら和菓子に近いものとなり、まだパンにあまり馴染みがなかった日本人にも、受け入れられ、人気を博します。

1875年には、天皇陛下が東京の向島にある水戸藩の下屋敷でお花見をする際のお茶菓子として、人気商品であった「あんぱん」を献上することになります。木村親子は季節感を表現できる「桜」に目を向け、奈良の吉野山から八重桜の花びらの塩漬けを取り寄せ、あんぱんに埋め込みます。
こうして誕生したのが、あんぱんに季節感を加えた「桜あんぱん」です!

天皇陛下は、このあんぱんを大変気に入り、またことのほか皇后陛下のお口にも合い、皇室御用達となります。その後「桜あんぱん」は店頭でも販売されるようになり、今日まで変わらぬ人気を誇っているのです。
そして現在、明治天皇に「桜あんぱん」が献上された、4月4日が「あんぱんの日」として記念日に認定されているというわけです。

日本人になじみのなかった西洋の「パン」を、日本人になじみの深かった「酒饅頭」の技法を応用することにより、日本人にも定着させた木村親子の創意工夫には脱帽ですよね!

3月下旬から4月は桜の季節! 歴史を知った上で、桜あんぱんを頬張れば、いつもと違った味になるかも!?

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。
日本創芸学院「コーヒーコーディネーター養成講座」テキスト「コーヒーショップの経営」について執筆を担当、「飲食店開業セミナー」講師も務める。

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