Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のスイーツ面白事典>

vol.14
チョコレートの歴史(2)

前回に引き続き、チョコレートの歴史のお話です。

3,チョコレートの発展

19世紀に入ると、それまでのチョコレートの欠点を克服していく、いわゆる「チョコレートに関する4大発明」がなされ、チョコレートは飛躍的な発展を遂げます。

まず第1が 「ココアの発明」です。チョコレートの脂っぽさの原因は、カカオの約50%にも及ぶカカオバターという成分でした。バン・ホーテンはカカオをプレスして脂分を絞り出すプレス機を開発。大幅に脂肪分をカットすることに成功します。これによりカカオは「ココア」という飲みやすい飲み物になりました。バン・ホーテンのココアは今でも有名ですよね。

 

第2が「固形化の発明」です。バン・ホーテンは脂っぽいならば脂分を除去すればよいと考えたわけですが、逆の発想をした人がいました。脂分が多くてドロドロしているならば、さらに脂を加えたら固まるのではないかと考えたわけです。イギリス人のジョセフ・フライはカカオに更にカカオバターを加えて、初めて「固形」チョコレートを産みだしたのです。「飲み物」であったチョコレートが「食べ物」になった瞬間でした。

第3が「ミルクチョコレートの発明」です。カカオの苦みをミルクで緩和することができることは、知られていました。しかしカカオは「油分」、ミルクは「水分」。混ぜるのは困難とされました。それを解決したのがスイス人ダニエル・ピーターでした。彼はネスレが発明した粉乳を用いることでこの問題を解決し、苦みが少なく食べやすいミルクチョコレートを誕生させたのです。

第4が「コンチェの発明」です。スイス人ルドルフ・リンツが発明したザラザラ感をなくし滑らかな舌触りを実現するための攪拌技術です。

 
 

4大発明のうち2つがスイスで成し遂げられたことから、チョコレートといえばスイスと言われるようになりました。

4,高級ブランド化するチョコレート

近年チョコレートといえば、スイスよりもベルギーやフランスのものが有名ですね。ベルギーはスペイン・ハプスブルグ家の支配下にあり、比較的早くカカオが伝わりました。その中で1912年にジャン・ノイハウスがナッツにアメを絡ませてペースト状にしたものにチョコがけをした一口大のプラリーヌを考案し、板チョコ、塊チョコだけであった世界に、いわゆる「ボンボンショコラ」という魅力的な商品を加えます。

さらに1970年代に入るとフランスでは、ラ・メゾン・ド・ショコラの創始者ロベール・ランクス氏が、それまで量り売りや簡易包装が当たり前であったチョコレートをエルメスが使用しているような高級感のある箱に入れて販売することを始め、他の専門店も追随したことによりチョコレートは一気にブランド品として地位を確立します。また1980年代からは個性を前面に打ち出すため、作り手であるショコラティエの名前をそのままブランド名とすることが一般化します。最近では、さらに差別化・個性化を進めるためショコラティエ自らがカカオの産地に赴き、カカオ豆を選別し、焙煎などの加工を独自に行ない、チョコレートを製造するというBean to Barという動きが活発になっています。 

(チョコレートの歴史 おわり)

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。
日本創芸学院「コーヒーコーディネーター養成講座」テキスト「コーヒーショップの経営」について執筆を担当、「飲食店開業セミナー」講師も務める。

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