Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のスイーツ面白事典>

vol.1
バレンタインデー

もうすぐ、バレンタインデーですね。

日本では、バレンタインデーというと、女性から男性にチョコレートを贈る日とされていますが、 元々、バレンタインデーとは、3世紀ごろのキリスト教の司教、聖バレンタインという人物の記念日です。

ローマ時代、兵士は家族を持つと戦争に行きたがらないようになり士気が落ちるという理由で、皇帝は兵士の結婚を禁止していました。しかし、いつ戦争に駆り出されるかわからない上に家族も持てないというのは、可愛そうな話です。そこで、バレンタイン司教は結婚を望む兵士の望みを聞き入れ、内密に結婚させていました。しかしこれが発覚してしまい、バレンタイン司教は捕えられ、刑に処され、西暦269年2月14日に殉教します。つまり、バレンタインデーとはバレンタイン司教の命日なのです。

当時のローマではキリスト教はまだ異教とされていました。キリスト教では兵士の味方となり、結婚を許したバレンタイン司教の殉教日を重要な日として位置づけ、布教をするようになります。これがバレンタインデーとして定着し、ヨーロッパでは恋人たちがプレゼントを贈り合ったり、親しい人たちがカードを贈り合う習慣が根付いていったのです。

それでは、日本のバレンタインの習慣はどのように生まれたのでしょうか?
そのきっかけを作ったのはメリーチョコレートだと言われています。1958年、同社はヨーロッパでの習慣をヒントに百貨店でバレンタインイベントとしてチョコレートを販売します。当時はまだバレンタインの認知度は低く、売れたのはわずか3枚の板チョコとカードだけでした。

しかし、翌年には「年に一度、女性から男性に愛の告白を」というキャッチコピーでハートのチョコレートにネームを入れるサービスを打ち出します。その後、女性誌などでも特集が組まれ、バレンタインデーに女性から男性へチョコレートを贈るという習慣が浸透していったのです。


1970年代に入ると、バレンタインデーの習慣は、子供から大人まで幅広い層に根付いていきます。さらに1980年代には、ホワイトデーの習慣も定着していき「義理チョコ」の習慣も生まれます。 1990年代には範囲はさらに拡大し、職場や家族でもチョコレートを贈るのが一般化します。2000年代以降は女性同士でもチョコレートを贈る「友チョコ」の習慣も生まれました。

近時は、日本に店舗を構えていない海外ブランドが、バレンタイン期間限定で出店するなど、一年で最も品揃えが充実することから、自らのためにチョコレートを購入する「ご褒美チョコ」といった動きが増加しています。さらに、男性から意中の女性にチョコレートを贈る「逆チョコ」という現象も起きています。

せっかくですから、読者のみなさんも、是非、手作りのチョコレート菓子作りに挑戦してみて下さいね!


プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。

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