Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のスイーツ面白事典>

vol.12
クリスマスマーケット

さあ、クリスマス本番ですね! 前回も少しお話をしましたが、ヨーロッパのクリスマスは、11月の終わりごろから1月6日まで続くところが多くあります。 今日は、この1月6日の「エピファニー」についてお話をしましょう。

聖書によれば、東方に住む3人の博士が、救世主がこの世に現れたことを示す赤い星が空に輝いているのを見つけ、その星に導かれ、ラクダの背にゆられること12日間、12月25日(キリスト誕生~救世主の出現)+12日=1月6日にエルサレムに近いベツレヘムという馬小屋にたどりつき、生まれたばかりのイエス・キリストに会い、貢物を捧げたとされています。これにより、キリストが「公」に「現れた、顕れた」ことが知れたので、エピファニーは、日本では「公現節」「公顕節」などと訳されます。

クリスマスは、日本ではクリスマスケーキを食べる日ですが(笑)、本来はキリストの誕生を祝う祭りです。ヨーロッパのドイツ圏を中心に開かれるクリスマスマーケットでは、まさにこのシーン、 つまり、東方三博士が馬小屋にたどり着き、幼児キリストに貢物を捧げようとしている場面がジオラマ形式で再現されていて、「クリッペ」と呼ばれます。昔は文字が読めない人が多かったので、聖書の重要なシーンを、このようにジオラマや絵で表現したのです。教会のステンドグラスに聖書のさまざまな場面が描かれているのも同じ理由からです。

 

さてさて、お菓子の話。1月6日には「ガレット・デ・ロワ」というお菓子が食べられます。直訳すると「王様のお菓子」。先の東方三博士は今でいうところの占星術師だったと言われますが、のちに さまざまな国の王であったと解釈されるようになります。つまりキリストの誕生にあたっては、色々な国から王様が貢物を持って祝福に来た。キリストはそれほど偉大なんだと。それを記念するお菓子ですから「王様のお菓子」と呼ばれるわけです。

日本で見られる「ガレット・デ・ロワ」は、丸いパイ生地にアーモンドクリームを挟んだものが主流ですが、これは主にパリなどフランスの北部で見られるもので、フランス南部やスペイン、ポルトガルなどでは、ブリオッシュ生地(バターたっぷりのパン生地)を大きなドーナツ状に成型した「パン・デ・ロワ」が多く見られ、歴史的にはこちらの方が古いものであるとされます。

 

また、日本では「ガレット・デ・ロワ」に、先に述べたアーモンドクリームを挟むのが一般的ですが、 フランスでは、アーモンドクリームにカスタードクリームを加えた「クレーム・フランジパーヌ」を挟んだものが多く見られます。

ガレット・デ・ロワには、フェーブと呼ばれる小さな陶器を忍ばせておき、自分のピースにこれが入っていた人は、王冠をかぶり、なんでも人に命令できるという「王様ゲーム」も、この日の行事として行われます。

 

ガレット・デ・ロワは、最近は日本でも多くのフランス菓子店で見られるので、1月に入ったら注意してみてください!

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。
日本創芸学院「コーヒーコーディネーター養成講座」テキスト「コーヒーショップの経営」について執筆を担当、「飲食店開業セミナー」講師も務める。

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