Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のスイーツ面白事典>

vol.11
クリスマス・クッキー

いよいよ、クリスマスシーズンが近づいてきましたね!
日本では、クリスマスというと一般的には12月24日のクリスマスイブがメインで、ある特定の日の行事というイメージが強いのですが、ヨーロッパでは、一般に11月の下旬から12月25日まで、長いところでは1月6日(エピファニー=公現節)までというところが多く、日本が「点」(一定の日)としてクリスマスをとらえるのに対してヨーロッパでは「線」(一定の期間)としてとらえられています。

クリスマスの時期、約1か月にわたり、ドイツ圏の国々では、街の広場でクリスマスマーケットが開かれ、日本の夏祭りのように多くの屋台が立ち並び、街は華やいだ雰囲気に包まれます。

 

さて、クリスマスの時期のお菓子ですが、フランスの「ブッシュ・ド・ノエル」、ドイツの「シュトレン」などが日本では有名ですが、このほかにもイタリアの「パネトーネ」「パンドーロ」などがありますし、同じくフランスでも南仏の方では「トレーズデセール」と呼ばれる13種のデザートが用意されます。

そういった各国、各地方でさまざまなクリスマス菓子がある中でも、もっともポピュラーなのが「クリスマス・クッキー」です。ヨーロッパにはさまざまな種類のケーキがあるのに、なぜケーキではなく、クッキーなのでしょうか?

以下のほかにも、さまざまな説がありますが、クッキーをお菓子としてではなく、「種なしパン(発酵だねを入れないパン=発酵させないパン)の一種だと理解するとわかりやすいと思います。

①旧約聖書にユダヤ人がエジプトを脱出する際に無発酵のパンを持って行ったのでそれをしのんでクッキーを食べるという説

②昔は発酵のメカニズムがわかっておらず、パンが膨らむのは悪魔の仕業かも知れないと考えられており、そのようなものをクリスマスの時期に食べるのはふさわしくないと考えたから、発酵させないパンを食べたことに由来するという説

いずれにしろ、クリスマス前の時期、各家庭では毎日お母さんがクッキーを焼きます。日ごとに種類を決めて大量に焼いて、それを缶に入れてストックしておき、クリスマスまでにいろいろな種類を焼き、最後にそれを混ぜて、ミックスクッキーにして、親戚や友人に配るということがよく行われます。
教会などでも、有志がこうして作ったクッキーを売り、収益金を教会に寄付したり、貧しい人々に施しをおこなったりします。

 

幼稚園や小学校などでは、子供たちがクッキーにアイシングなどでデコレーションをおこない、クリスマスツリーにぶら下げる飾りにする場合もあります。

日本ではクリスマスといえば、クリスマスイブにクリスマスケーキを食べるだけという家庭がまだまだ多いと思いますが、寒いこの時期、家の中でお子さんたちや友人と一緒にクッキーを焼いて楽しんでみてはいかがでしょうか。

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。
日本創芸学院「コーヒーコーディネーター養成講座」テキスト「コーヒーショップの経営」について執筆を担当、「飲食店開業セミナー」講師も務める。

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