Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のスイーツ面白事典>

vol.6
アフタヌーンティー その2

もうすぐ7月。初夏ですね。
さて、前回に引き続き、アフタヌーンティーのお話です。

家内と2人、ロンドンで、さまざまなアフタヌーンティーを研究するために、アフタヌーンティーで有名なホテルを訪ねました。

席について注文を済ませると、例の3段プレートが運ばれてきました。
3段プレートの内容としては、一番下のプレートにサンドイッチ類、中段の皿にスコーン、一番上のプレートにプチケーキなどのお菓子類というのが一般的なのですが・・中段のスコーン皿の部分が抜けています。メニューに「当ホテルではスコーンは焼き立てを供しております」と書いてあったので、少し時間がかかるのかなと思い、しばし待つことに。

 
※写真はお隣のテーブルのアフタヌーンティーお誕生会の様子。中段の皿にスコーンがのっていないのがお分かりいただけるでしょうか。

なかなか出て来ないスコーン。こちらとしては、3段揃った綺麗な写真を撮りたいのでサンドイッチには一切、手をつけず、おあずけ状態。ボーイの方を見ると、あちらもこちらが気になる様子。 「???」 堪らず、手を挙げてボーイを呼び、「3つ揃ったところを写真に撮りたいんだけど、スコーンはまだ?」と言うと、ボーイが笑いながら説明してくれました。

ちゃんとしたホテルでは、客がまずサンドイッチを食べ終えたところで、サンドイッチはもうよいか、お替りは必要かと聞いて、客がよいと言ったら焼き立てのスコーンを運んでくる。ボーイとしては客がサンドイッチを食べ終えるのを待っているわけで、我々がなかなかサンドイッチに手をつけようとしないので「サンドイッチが、嫌いなお客様なのか??」と悩んでいたという。 事情がわかり、我々もボーイも大爆笑。先にスコーンを運んできてくれました。


話はまだ終わりません。
サンドイッチ→スコーン→スイーツと食べ進み、ようやく終了と思っていると、ボーイが、何種類かのホールケーキをのせたワゴンを押してテーブルの横にやって来たのです。
「もう少し、お菓子はいかがですか?」
「これもアフタヌーンティーの一部なの?」
「もちろんです! お好きなだけお召し上がりください」
せっかくなので、研究のため?と称して全種類を少しずついただくことに。当然のことながらホテルを出るころには夫婦揃ってお腹がパンパンに・・。結局ディナーを予約していたお店はキャンセル。

しかし、夜の9時を過ぎると、お腹がすいて、ソーホー(中華街)にくり出し、軽く食べることに。
「なんか、貴族みたいな食事パターンになっちゃったな」
「貴族みたいな、ポッコリおなかにならないでよ」

こうしてアフタヌーンティーに翻弄された一日が終わったわけですが、本場イギリスでは今でも伝統的なアフタヌーンティーの文化が残っていること、アフタヌーンティーンはまさしく当時の貴族の生活サイクルに根ざしたものであったことを、身をもって知ったのでした。

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。
日本創芸学院「コーヒーコーディネーター養成講座」テキスト「コーヒーショップの経営」について執筆を担当、「飲食店開業セミナー」講師も務める。

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