<猫井登のスイーツ面白事典>
vol.3
ポワソンダブリル
4月1日は、エイプリルフールですが、フランスでは「ポワソンダブリル」と呼びます。
直訳すると「4月の魚」。魚のかたちをしたチョコレートなどのお菓子が出回ります。
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フランスでは昔、新年の始まりは4月1日とされていて、贈り物をする習慣がありました。日本でいえば、お年始のようなものですね。ところが1564年シャルル9世という人物がグレゴリウス暦を採用し、これからは新年の始まりを1月1日とする勅令を出します。
しかし、それまでの古い習慣を捨てられなかった人々は、1月1日ではなく、相変わらず4月1日に贈り物をしました。暦の上では3月20日までは魚座にあった太陽は4月1日には牡羊座に移動して しまっています。そこで、4月1日に贈り物をする人たちのことを、時代遅れの人々という意味を込めて「4月の魚」と呼んで、空の箱を贈ったりしてからかったと言います。これが後に、人をだましてもよい日=エイプリルフールになったと言われます。
今でもフランスでは、魚の絵を描いた紙を気づかれないうちに人の背中に貼るという遊びが家庭や職場などで行われます。お菓子としては、魚のかたちをしたチョコレートが多く見られます。大きな魚のチョコレートを割ると中から小さな魚のチョコレートが出てくるものもあります。小魚は復活を象徴するものでもあるので、小魚のチョコレートは復活祭の時期にも見られます。
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こんな話を聞いたことがあります。昔、フランス人パティシエが日本にやってきて、4月に魚の形のチョコレートを作りましたが、さっぱり売れません。もったいないのでそのまま放っておいたら、ある日、突然売れ出します。フランス人パティシエは、日本では5月にポワソンダブリルの日があると思ったようですが、なんとそれは、5月5日!こどもの日。ところ変われば、魚の意味も変わるのです。
日本でも、最近この時期に、魚の形のチョコレートを見る機会が増えましたが、やはり多いのは、魚のかたちをしたフルーツパイ。魚のかたちにパイ生地を切り、上にカスタードクリームなどを絞り、色とりどりのフルーツをあしらったもの。ちょうど、新入学の季節とも重なり、めでたいということで、購入していかれるお客様も多いようです。
フランスでは、一応、ポワソンダブリルの魚は、「サバ」という説が多いようですが、日本のこどもの日の魚は「コイ」。めでたい日の魚は「タイ」。同じ魚のお菓子が色々な魚に見立てられるのは、面白いですね。
魚のパイは、冷凍パイ生地シートを使えば、家庭でも簡単に作ることができます。パイ生地シートは良く浮き上がるように出来ているので、薄く伸ばして、好みの魚のかたちに切った台紙をあててA、B2枚切り出します。Bは外側を1㎝くらい残して内側を切り取ります。これをAの上に形がずれないように、卵黄で接着すればA生地の周囲に「土手」が出来ます。焼き上がったら、カスタードクリームや生クリームを絞り、季節のフルーツを飾れば、完成です!
4月1日はサバ型に、5月5日はコイ型に、めでたい日にはタイ型にアレンジして楽しみましょう!