Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のお菓子修業日記>

vol.62
卒業試験への準備 その2

<レシピ作り>
レシピの提出期日が迫ってくる中で、毎日のように、オリジナルケーキの試作を繰り返していた。
まさしく、産みの苦しみを味わった日々。ここまでに自分なりに決定したことをまとめる。

(これまでのまとめ)
①ケーキの内容は、マロンと洋梨を組み合わせたものとする
②生地は、バニラのビスキュイ・ア・ラ・キュイエール(フィンガービスケットのような生地)
③基本構造は、一番上は洋梨のシブースト+洋梨のクリーム+マロンムース
④ケーキの名前は、栗も梨も秋のものであることから 「メロディ・ドゥ・オットム(秋のメロディ)」 とする。

(ケーキのデコレーション)
実はケーキのデコレーションにはキチンとしたルールがある(テキスト③p86~参照)。食べられないものを使用しないというのは、当然として、基本的に上にのせるものはケーキの中に使われているものでなければならない。デコレーションは内容物を知らせる役割も担(にな)っているからだ。このルールから外れると減点の対象となる。この原則からすれば、今回のケーキでデコレーションに使えるのは洋梨とマロンだけだ。


試作第1号

とりあえず、試作品を作り、友人にみてもらうことに。洋梨で作った白バラとマロンをあしらってみるが、もうワンポイントあったほうが良いという意見が出たので、チョコレートを刺すことを考える。もちろん現状ではルール違反だ。味についても、生地がバニラのビスキュイでは、後味が甘ったるいという意見が出る。


試作第2号

第2号では、生地をバニラ→チョコレートに変更。 チョコレートの苦みにより、あと味の甘ったるさは解消されて、味のバランスが良くなり、またチョコレートを使うことから、デコレーションにもチョコレート を使うことが可能となる。しかしながら、生地の割合が多すぎるという意見が出る。


試作2号の断面


試作3号の断面


試作第3号では、上の方の生地を抜き、マロンムースと洋梨のクリームを増やす。 断面もすっきりと綺麗になった。友人から、「美味しい」との言葉をもらい、ひと安心。デコレーションは試作第2号のものにチョコレートを刺したものに最終決定する。

<手順の確定>
ビスキュイ、シロップ、マロンムース、洋梨のクリーム、洋梨のシブースとパーツごとのレシピを作り上げ、何を、どの順番で作っていけば、もっとも能率的かを考えて、最終的な手順を確定し、まとめる。

結局、試作第1号までに3台+試作第1号~3号=3台+練習5台と、合計11台のケーキを卒業試験の日までに作る。

さあ、あとは卒業試験だ!

 

つづく

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。

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