Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のお菓子修業日記>

vol.61
卒業試験への準備 その1

<まえがき>
今まで、この「修業日記」では、製菓学校の授業内容と実習の様子をお伝えしてきましたが、「ガトー・ド・マリアージュ」を作り終え、残るは卒業試験のみとなりました。
卒業試験では、所定の時間内に自分のオリジナルケーキを制作することが求められます。
このケーキで、卒業水準を満たす製菓技術や知識を身につけているかが判断され、試験の合否、ひいては卒業の可否が決定されます。

今までは、決められたレシピ内容で、習ったとおりの手順で作業を行えばそれなりのケーキが出来上がりましたが、卒業制作ではレシピから作らなければなりません。自分が思ったような生地を作るためには、どの粉をどれくらい使えばいいのか、自分の考えたムースを固めるには、どれくらいのゼラチンを使えばいいのか・・すべて計算、実験しなければなりません。

オリジナルケーキの制作と言うと、夢のある楽しい作業に思えるかもしれませんが、ベテランのパティシエにとっても大変な作業で、いわんや学生にとっては、それはそれはハードな作業です。まず、どのようなケーキを作るかの「構想作り」から始まり、「レシピ作り」「手順の確定」という順序で進んでいきますが、途中何度も試作を行い、味わい、食感などを調整しつつ、その上、デコレーションも考えていかなければならず、苦労の連続です。

今回と次回は、時間を少し巻き戻し、卒業試験へ向けた「オリジナルケーキ作り」について話をしたいと思います。いつか皆さんが、ご自分のオリジナルケーキ作りをされるときのご参考になればと思います。

<構想作りと試作>
製菓学校の授業も残すところあと2か月余りとなった。そろそろ真剣に卒業制作について考えなければならない時期に来ていた。所定の期日までにレシピを完成し、提出しなければならない。

以前から、栗と洋梨を組み合わせたケーキを作ろうと決めてはいたものの、具体的なイメージは、未だ白紙状態。とりあえず試作品をいくつか作って友人に試食、講評してもらうことにする。

思いつくままに3種類ほど作ってみる。とりあえず、外見には、かまわず、組合せを考える。

1、洋梨のムースとマロンのケーキ

2、洋梨のクリームとマロンのケーキ

3、マロンケーキのティラミス風

味の印象は、素材の組合せの仕方で大きく変化し、頭で考えたとおりにはいかないことを今更ながら思い知らされる。 結局、一番評判の良かった1のケーキをベースに改良を加えていくことにする。

今まで学校で習ったことを、もう一度見返し、持っているお菓子の本をすべて引っぱり出して改良のヒントを探る。

苦闘の日々が始まった。

 

つづく

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。

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