Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のお菓子修業日記>

vol.60
ガトー・ド・マリアージュ その2

<デモ開始>
今回は「ガトー・ド・マリアージュ」(ウェディングケーキ)を仕上げてもらう。前回はケーキの上にのせるアメ細工と生地を作ってもらったので、今回はクリームを作り、デコレーションをしてもらう。

基本構造は、中級のときに作ったフレジエと同じだ。上下のスポンジの間で苺の断面が綺麗に見えるように、クリームを流し込んだら苺を立てておいていく。ただクリームは異なる。フレジエはカスタードにバターを混ぜたクリームを使ったが、重いクリームなので、今回はカスタードに泡立てた生クリームを合わせて作る。

デコレーションとしては、まず、ケーキの表面全体に薄く伸ばしたマジパンを貼り付ける。その上に前回作ってもらったアメ細工をのせるほか、グラスロワイヤル(粉砂糖、卵白、レモン汁を合わせたもの)でケーキの表面の縁取りをしたり、ハートの模様などを施す。

あとは、パラチニット(ダイエットシュガーとも呼ばれる。アメ細工用の砂糖。テキスト3巻p96参照)で透明な飾りを作って、飾る。苺にジャムを塗って飾るのもよいだろう。

<実習開始>
生地は前回作り、すでに出来上がっているので、カードル(長方形の金属の枠型)の大きさに切り、底に敷く。そこにクリームを流し込み、苺を立てていく。作業としては単純だがケーキが大きいので時間がかかる。

隣で作業を行なっていた、お仕置きマダムが話しかけてくる。
「あんたさぁ、卒業制作のケーキの試作、やってる?」
「何回か、やったよ。まだデコレーションをどうしようか、悩んでいるけど」
「そうなのよね。せっかくだから豪華にしたいと思うんだけど、時間内に出来なければアウトだしね」

卒業制作とは言ってもテストには変わりないから、所定の時間内に仕上げて、先生の審査を受けなくてはならないのは、基礎クラス、中級クラスのときと変わりはない。異なるのは与えられた課題のケーキではなく、自分で創作したレシピのケーキを作る点だ。

もちろん複雑な構造や凝ったデザインのケーキを作れば点数は上がるだろうが、その分、作業量が増えることになり、当日自分の首を絞めることになる。自分の技量を充分に見極めた上で作るケーキの内容を決めないと時間内に完成できず、卒業できなくなってしまう。

苺を並べ終わり、上から隙間がないようにクリームを絞り入れ、スポンジをかぶせてしっかりと押えて、一旦冷蔵庫で冷やす。

マジパンなど、デコレーションの用意を整え、ケーキを冷蔵庫から取り出してデコレーション作業をおこなう。

最後に、前回作ったアメ細工を取り出して、のせれば完成だが、箱をあけると、アメ細工が全体的にへたっている!ほかの人も同じようだ。日本は湿度が高いのでアメ細工を長時間保管するのは難しい。

それでも、なんとか完成。これが実習で作る最後のケーキだ。よくぞ、ここまできたと思う。

しかし、ずっと感慨にひたっているわけにはいかない。卒業制作のケーキのデコレーションをキチンと決めなければ。

つづく

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。

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