Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のお菓子修業日記>

vol.59
ガトー・ド・マリアージュ その1

<デモ開始>
今回と次回で「ガトー・ド・マリアージュ」を作ってもらう。要はウェディングケーキだ。今回は上にのせるアメ細工と生地を作ってもらい、次回はクリームを作り、デコレーションをして仕上げてもらう。

まずは、生地作りからおこなう。生地は中級のときに作ったフレジエの生地と基本的に同じだ。カスタードと生クリームを合わせたクリームを挟むので、生地の味わいがクリームに負けないように、小麦粉の半分以上をアーモンドパウダーに置き換える。配合的に締まった生地になるので、しっかりと泡立てて空気をいれることが重要だ。

生地が出来上がったら、天板にオーブンシート、その上にカードル(長方形の金属の枠)をおいて、中に生地を流し込んで焼成する。今回の生地は厚みがあるので、最初175℃で20分ほど焼き、膨らんだら温度を150℃くらいに落としてしっかりと火をとおす。
焼き上がったら、冷まし、型ごとラップして次回まで冷蔵保存しておく。

次にアメ細工のアメを作ってもらう。アメ細工の技法にはシュークル・ティレ(引きアメ)、
シュークル・スフレ(吹きアメ)、シュークレ・クーレ(流しアメ)などがあるが、今回は引きアメの技法を使って作品を作っていく。

引きアメとは、アメが熱いうちに<引っ張って、伸ばし、まとめ>を繰り返すことにより空気を含ませる技術だ。空気の含有量によって飴の色が変化し、やがて光沢をもつようになる。花びらやリボンを作るに適した技法だ。

まずは、鍋に砂糖と水を入れて中火で煮詰める。これに水あめを加え、130℃になったら酒石酸(しゅせきさん)を3滴ほど入れる。酒石酸はアメの結晶化を防ぎ、伸ばし易くしてくれる。150℃まで温度を上げたら、鍋ごと氷水につけて粗熱をとる。

アメをシルパット(オーブン用のシート)の上に出し、<広がったら中央にまとめ>を繰り返して温度を下げていく。温度が下がって手で持てるようになったら、引っ張って伸ばし折り曲げてまとめ、また引っ張って伸ばす、を繰り返す。このように空気を入れてツヤを出す作業を「サチナージュ」と呼ぶ。30回ほど繰り返し、アメが白くなり、ツヤが出ればよい。

アメをひとまとめにして、端を引っ張り、薄く伸ばしたらハサミで切って成形し、型ではさみ、葉の模様をつける。同じ要領で花びらを作り、バラの花などを作っていく。どのようなデザインの花を作るかは各人の自由だ。

<実習開始>
今日は個人ごとに作業を行うので、お仕置きマダムとの共同作業はなし。
よかった(笑)
ケーキのスポンジは前にも作ったことがあるものなので、無事作業終了。

アメ作りに取り掛かる。アメは初めての作業なので、みんな真剣だ。
なんとかアメを作り、伸ばす作業に移ろうとするが、
「うわぁ あぢー」 一旦つかんだものの、すぐに放す。熱くて触れたものではない。
横で並んで作業をしていたお仕置きマダムが、
「だらしないわね~ これくらい触れないと主婦はつとまらないわよ~ケケケ」
と鼻で笑いながら馬鹿にした口調で言う。
「面の皮と同様に、手の皮も厚いだけじゃないの」と私が小声でつぶやくと
「ちょっと、あんた!聞こえたわよ!! O$#&2%#・・・」
そんな会話をしながらも必死にアメを伸ばす作業を行う。終わるころには、手はアメの熱で真っ赤になっていた。

次に成形作業に移るが、これまた、なかなか上手くいかない。
なんとか作品らしきものが出来たころには全身汗だくで、ぐったりとして腰が抜けそうだった。

アメの最大の敵は湿気だ。作品とともに大量の乾燥剤(シリカゲル)を箱に入れて保存する。次回どんなウェディングケーキが完成するだろうか。

     

つづく

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。

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