Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のお菓子修業日記>

vol.58
パート・ド・フリュイとコンフィチュール

<デモ開始>
今日は、カシスと洋梨のパート・ド・フリュイとアンズのコンフィチュールを作ってもらう。パート・ド・フリュイとは、直訳すると果物の生地という意味になるのだろうが、要は果物のゼリーのことだ。日本で果物のゼリーというと、透明なゼリーの中に果肉が入っているものを思い浮かべるかも知れないが、それとは異なり、果物のピューレをペクチンで固めたものだ。一方、コンフィチュールとはジャムのことだ。

まず、パート・ド・フリュイを作る。砂糖とペクチン(ゲル化剤の一種。ゼラチンのように液体を固める作用がある)を混ぜたものをカシスと洋梨のピューレによく溶かして鍋に移して火にかける。

沸騰するとペクチンの作用でとろみが出てくる。そこに砂糖、水あめを加え、煮詰める。
最後に酒石酸(レモンやブドウなどに含まれる果実酸の一種。酸味料として使われる)を水で溶いたものを加え、キャードル(金属製の四角い枠)に流し込む。冷蔵庫で冷やす。

あんずジャムの製作に取り掛かる前に、ジャムを入れる瓶をよく洗い、100℃のオーブンに入れて殺菌しておこう。

アンズのジャムを作る。今日は缶詰をつかう。缶詰のシロップ、果肉、砂糖、水を鍋に入れて一度沸騰させる。灰汁をとり、一旦火を止めてアンズのピューレを加える。再び火をつけてしっかりと煮詰める。目安は冷やした皿にジャムを垂らし、皿を立てたときにゆっくりと流れるくらいまで煮詰める。

殺菌した瓶に流し込み、しっかりと蓋をしたら、上下をひっくり返しておく。これで蓋も 瓶もジャムの熱で再度殺菌して長期保存に耐えるようにする。

パート・ド・フリュイは、固まったら、冷蔵庫から取出し、グラニュー糖を全体にまぶして完成だ。

<実習開始>
今回の実習は、楽ちん! あっという間に出来て、余裕をもって作業を進める。
今日は、ジャムを入れるための瓶を各自、家から持参することになっていて、私は家にジャムの小瓶がたくさんとってあったので、小分けして詰めたのだが、お仕置きマダムは、馬鹿デカい、はちみつ瓶1本のみ。

「ふう~ん。そんな風に小さな瓶に詰めるとオシャレだわね」
「???」お仕置きマダムが人のことを褒めるなんて滅多にないことで、不穏な気配が!
「今日、これから友達に家に遊びに行くのよね~。なんか、いいお土産ないかなあ」
「さあ・・」ひょっとして、オレのジャム、狙われている???
(何本もあるんだから、1本くらい、よこしなさいよ)
口には出さないが、マダムの顔にはそう書いてある。
と同時に(くれないと、どうなるか知ってるよね~)という殺気も全身から出ている(笑)。
「あの~、これよかったら1本・・」気の弱い私は、仕方なく差し出す(笑)
「あんた、やっぱり優しいわね~」
(あんたが、怖すぎるだけだぁ~ 笑)

 

つづく

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。

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