Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のお菓子修業日記>

vol.56
レストラン・デセール その1

<デモ開始>
今回と次回は、レストラン・デセールを作ってもらう。レストランで食事のあとに出されるデザートだ。レストランデザートの場合は、単にそれぞれのお菓子を作ればよいというわけではなく、全体のまとめ方というか、皿への盛り付けを考えなければならない。

今日は、前回途中まで仕込んでもらったパイ生地を使って、「レモン風味のミルフイユ 苺のシャーベット添え」を作ってもらう。もたもたしているとシャーベットが溶けてしまうので、段取りを考えて盛り付けをしてほしい。

まずはミルフイユに使うパイ生地だ。復習になるが、パイ生地には、①通常の、生地にバターをはさみ、折っていくもの、②逆にバター(正確にはバターに粉を混ぜたもの)に、生地をはさんで折っていくもの、③即席で生地とバターをまだら状にして折っていくもの の3つがある。今日は②の逆折込の生地を使う。

次は、レモンのクリームだ。基本的にはクレームパティシエール(カスタードクリーム)と作り方は同じだ。クレームパティシエールは牛乳でつくるが、このクリームでは、牛乳を生クリームに置き換え、レモンの皮を擦りおろしたものとレモン果汁を加えて作る点が異なる。もう1つは、最後にゼラチンを加える点だ。これはクリームを絞ったときにダレないようにするためだ。

今日のミルフイユは、通常と異なった組み立て方をおこなう。ふつうは、パイ生地にクリームをはさんで切っていくが、今日は、先にクリームを絞って冷凍しておき、一方でパイ生地も切っておき、最後に皿の上で組み合わせて盛り付けるという方法をとる。
このあたりが、通常のお菓子作りとレストラン・デセールの違いだ。技法をしっかりと覚えておいてほしい。

シャーベットについては、機会を改めて講義を行うので、今日はこちらで用意したものを使い、盛り付けの練習に専念してほしい。

<実習開始>
今日も、お仕置きマダムと共同作業。
生地を焼き、クリームを作って絞っていく。逆折込生地は中級でやったし、パティシエールも何回も作っているのでさほど問題はない。

クリームを絞っているとマダムが話かけてきた。
「授業も終盤戦でしょう。そろそろ卒業制作のレシピ考えないといけないわよね。
 あんた、なんか考えている?」
「卒業試験のときは秋だし、洋ナシとか栗をつかったアントルメにしようと思っているんだけど、試作してみないとなあ」
「そうなのよね。実習室で時間内に作り上げないといけないから、練習しておかないと。あんまり凝ったものにすると、自分の首しめるしねぇ」
卒業制作だから、立派なものを作りたいとは思うが、一方で自分の技量と時間を天秤にかけて、内容を決めないと、当日パニックになってしまう。そろそろ真剣に考えないといけない時期にきていた。

冷凍したクリームを取り出し、パイ生地と同じ大きさに切り、皿の上でパイ生地とクリームを交互にたてて、ミルフイユを作る。なるほど、生地とクリームを最後に合わせれば、パリッとした状態で生地をお客様に提供できるし、商品のロスも防げる。
まだまだ学ぶことは多い。シャーベットを盛り付けて完成!

シャーベットが溶けそうなので、慌てて提出用作品の写真を撮る。
あとで見たらピンボケ。 せっかく頑張ったのに。
逆に作品提出後 余った材料で自分のおやつに作ったものはピントが 合っている。
逆だったらよかったのに。うまくいかないものだ。 トホホ


つづく

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。

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