Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のお菓子修業日記>

vol.52
チョコレートとコーヒー、ナッツのアントルメ

<デモ開始>
今回は、チョコレート、コーヒー、ヘーゼルナッツを使ったアントルメ(ホールケーキ)を作ってもらう。このケーキは、見かけは地味だが、2種類の生地、2種類の中身を使うので作業は結構大変だ。

まずは、チョコレートのクリームのディスクを作る。牛乳と生クリームを合わせたものを火にかけて熱し、砂糖、コクを出すための卵黄を混ぜる。ゼラチンを溶かしこんだら、チョコレートと合わせ、バーミックス(スティック式のハンドミキサー)で滑らかにして丸い型に流し込み、冷やしておく。

2つ目はヘーゼルナッツ入りの生地を作る。溶かしバターにカカオマスを合わせ、しっかりと泡立てたメレンゲを加え、小麦粉、砂糖、ローストしたヘーゼルナッツを混ぜ、オーブンで焼く。これが底生地となる。


ヘーゼルナッツの生地の焼き上がり

3つ目は側面に使うコーヒーのジョコンド生地を作る。一般的にジョコンド生地というのは、小麦粉の大半をアーモンドパウダーに置き換えたものを言うが、今日は底生地にヘーゼルナッツを使っているので一体感を持たせるために、ヘーゼルナッツのパウダーで作る。ジョコンド生地といえばアーモンドパウダーと決めつけるのではなく、この辺のテクニックをしっかりと学んでほしい。また今日はメレンゲにインスタントコーヒーを溶かし込んでコーヒー風味に仕上げる。

最後はコーヒームースだ。イタリアンメレンゲ(泡立てた卵白に熱いシロップを合わせたもの)とコーヒーを煮だした牛乳と生クリームにゼラチンを入れたもの、それに泡立てた生クリームを合わせてムースを作る。

パーツが出来たら組み立てだ。セルクル(高さのある丸い金属の輪)の底にヘーゼルナッツの生地を入れ、型の内側の側面にジョコンド生地をぐるりと貼りつける。

底生地にディスクを作ったときの余りのチョコレートクリームを接着剤として塗り、チョコレートクリームのディスクを置く。その上に丸く抜いたジョコンド生地を置き、コーヒームースを流し込む。ここで一旦冷やす。

最後に表面にグラサージュ・ショコラ(光沢のあるデコレーション用のチョコレート)を流し、溶かしブラックチョコレートをコルネ(円錐型の紙)に入れて細い線でデコレーションする。ヘーゼルナッツを飾って完成だ。

最後にヘーゼルナッツとコーヒー豆のチョコレートを飾るのは、このケーキにヘーゼルナッツとコーヒーが使われていることを示すためだ。デコレーションには、このような予告機能がある。したがって、そのケーキに使われていないものをデコレーションに使用するのは、本来はルール違反だ。上級コースだからこういったことも知ってほしい。

<実習開始>
今日は作業工程が多いので、当然、お仕置きマダムと共同作業。しかし、マダムも作業に必死で、私に小言をいうヒマもなし(笑) 2人とも黙々と作業をこなし、なんとか時間内に完成!

最後のデコレーション。シンプルだが、線を等間隔に、かつ滑らかにしぼるのは、なかなか難しい。線が少し歪んでいるのはご愛嬌。

せっかく手間をかけたケーキなので、友人夫婦にプレゼントしよう。


 写真手前が今回のアントルメ

つづく

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。

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