Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のお菓子修業日記>

vol.51 
チョコレートとフランボワーズのアントルメ

<デモ開始>
今回はチョコレートムースの中にフランボワーズのクリームを入れたアントルメ(ホールケーキ)を作ってもらう。今日のケーキは、生地もクリームもコクがあり、味わい深いものだ。ケーキにどのようにコクや味わい深さをつけるかをしっかりと学んでほしい。

まずは、中に入れるフランボワーズのディスクを作る。まずはフランボワーズのピューレを沸騰させてゼラチンを入れる。基礎クラスではこのまま冷やし固めて ディスクにしたが、今日はこれに全卵と卵黄、砂糖混ぜたものを合わせてコクを出し、少し冷やしてからポマード状にしたバターを加えていく。卵とバターで深い味わいにしていくわけだ。

次に生地だが、今日はマジパンを入れて作る。マジパンはアーモンドを挽いたものから作られているから、これを合わせることで、生地に旨みを加えることができる。まずマジパンを少し温め、柔らかくしたら卵黄と砂糖を少しずつ加えて、なめらかな状態にしておく。

別のボウルに卵白と砂糖でメレンゲを作り、①メレンゲ少量を先に作ったマジパンに合わせる。また同じく②メレンゲ少量を溶かしバターと合わせておく。まず①の方をメレンゲのボウルに戻し、混ぜ合わせたらそこに小麦粉とカカオパウダーを加えていく。混ぜたら最後に②を加えて少し混ぜれば完成だ。

最初にメレンゲ少量をマジパンや溶かしバターに合わせるのは、いきなりメレンゲのボウルに入れると混ざりにくく、何度も混ぜて泡をつぶしてしまうのを防止するためだ。特に油分は泡をつぶしやすいので、バターは最後に入れて、入れたら、混ぜは最小限にするということをよく学んでほしい。

生地を天板にのばし、オーブンで焼く。焼き上がったら少し冷まして、①幅4.5㎝、長さ60㎝と②直径16㎝の円形を2枚抜く。直径18㎝のセルクル(金属製の輪)を用意して、細長い①をセルクルの内側に沿ってピッチリと立てる。これがケーキの側面になる。それから円形の生地にフランボワーズのジャムを塗って底に入れる。

ここまで出来たらムース作りだ。今まではガナッシュ(温めた生クリームにチョコレートを合わせたもの)に泡立てた生クリームを合わせただけだったが、今日は、ガナッシュにパータ・ボンブを合わせて作る。パータ・ボンブとは卵黄に熱いシロップを加えて混ぜたものだ。イタリアンメレンゲ(卵白+熱いシロップ)の卵黄版だ。熱いシロップを加えることで卵の雑菌も殺菌できる。パータ・ボンブを加えることでコクが生まれ、奥深い味わいになる。

ムースが出来たら先ほどのセルクルに少量流し込み、フランボワーズのディスクも入れ、さらに上からムースを流し込み、最後に生地でふたをする。

最後に表面にムースを絞り、ピストレ(チョコを霧状にして吹き付ける)をすれば完成だ。

<実習開始>
今日の共同作業は、チョコムースに使う、パータ・ボンブだけ?よかった、よかった。
「簡単だから、あんた、作っといてよ。中級の修了試験のイタメレで失敗したみたいにシロップを煮すぎて焦がしたら、お仕置きだからね!!」
きょえ~。中級の修了試験での悪夢がよみがえる(笑)。
今回は、シロップも透明で、ムースも無事完成。

生地の中にチョコムースを流し、フランボワーズのディスクを入れて組み立て、ケーキの上にもムースを絞るが、
「ケケケ・・あんたの絞り、おたまじゃくしみたいじゃん」
ほっといてくれーい(笑)

最後にケーキの表面全体にチョコレートを吹き付ける。ペンキ屋さんが、壁にペンキを吹き付けるのと同じ要領だ。実は機材も同じで、ペンキ用の機材を殺菌し、ペンキではなく、溶かしたチョコレートを入れているだけだ。この吹き付けにより、ビロードのような質感がうまれる。
最後に、フランボワーズのジャムと実を飾って、今日も無事完成!

 

つづく

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。

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