Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のお菓子修業日記>

vol.47 マジパン人形

<デモ開始>
今回は、マジパンを使って動物の人形を作ってもらう。マジパンというのは、アーモンドと砂糖をローラーにかけて挽いてペースト状にしたものだ。日本では、「マジパン」というと人形や飾りを作る素材で、食べるものではないと思われて いる節があるが、ヨーロッパでは、マジパンはそれ自体、好んで食べられるお菓子だ。

そのため、マジパンを薄く伸ばして、アントルメ(ホールケーキ)全体を被ったり、ボンボンショコラの中身に入れたりもする。もちろん人形や果物などに成型して着色したものも食べられる。日本人の感覚からすると、あんなものを食べるのか思うかも知れないが、 日本人だって、さまざまに着色して成型した和菓子の「煉り切り」はふつうに食べるだろう。煉り切りはヨーロッパのマジパンに起源があるという説もあるぐらいで、要は文化の違いだ。

さて、今日は5種類の人形をマジパンとチョコレートを使って作ってもらう。
まずは、テンパリングしたチョコレートをカップの中に厚めに流し込み、土台を作る。

マジパンで下半身の部分を作り、竹串を刺して、チョコレートをつけて土台のチョコレートの上に設置する。竹串を土台部分にも差し込みしっかりと固定する。ここで一旦冷蔵庫に入れて冷やしておく。

マジパンを棒状に伸ばして腕の部分を作る。これを下半身の胴の部分にのせる。5色のマジパンを薄めに伸ばして溝のあるローラーで模様をつけて丸く抜く。腕を一旦水平にして上から丸く抜いたマジパンをかぶせて、裏表をつけてシャツにする。

 

クマ、犬、猫、ウサギ、ブタなどの顔を成型し、スティックで目の部分に穴をあけてグラス・ロワイヤル(粉砂糖に卵白、レモン汁を合わせたもの)を注入して固まったら、チョコレートで目を入れる。

 


<実習開始>
例によって、今日もお仕置きマダムとの共同作業。土台、下半身、腕、服までは無難に作業をこなす。問題は頭というか顔の部分だ。先生が再び、やって見せてくれてそのとおりやるが、なかなか上手くいかない。

実習室は、し~ん。みんな、真剣。
40歳を越えて、真剣な面持ちで、マジパン人形の顔を作っている私の今の姿を昔の銀行の仲間が見たらどう思うだろうか。

「ちょっと、アンタのネコの顔、デカくない」
お仕置きマダムが、私の作品を見て、けなし、みんな大笑い。
(そういう、あんたのブタは、痩せすぎだろう)
お互いの作品を批評(酷評?)しあいながら、作業をおこなう。

ようやく完成! なんとか、ネコやウサギに判別できるか(笑)
いずれも、顔がなんとなくオッサンくさいのは、作り手がオッサンだから!?


つづく

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。

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