Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のお菓子修業日記>

vol.43 チョコレート その2

<デモ開始>
今日は、マンディアン、トリュフの2種類を作ってもらう。
マンディアンはキチンとテンパリングができていないと、上手く固まらなかったり、ツヤがでなかったりするので注意が必要。
トリュフは言ってみれば、チョコレートの中身の部分をテンパリングしたチョコにくぐらせ、ココアパウダーをまぶしたものだ。

テンパリングについて少し詳しく説明しよう。
テンパリングとは、一言でいうと「温度調整」ということだ。一般的にはチョコレートのテンパリングと表現されるが、問題はチョコレートの成分であるカカオバターだ。このカカオバターには、Ⅰ~Ⅴの5つ、(またはⅥまでの6つ)の結晶形があると言われている。このうち、Ⅴ型が結晶形として最も安定しており、光沢がある仕上がりとなる。

したがって、テンパリングとはⅤ型に結晶させる技術だといえる。Ⅰ型~Ⅴ型は、それぞれ融点(固体が液体に変わる温度のこと)が異なるのでそれを利用して結晶させていく。

製菓用のチョコレートは固形なので、まずいったん溶かす。だいたい50℃~55℃でどのような型でも融解するので、その温度までもっていく。必要以上に加熱すると焦げたりして、チョコレートが変質するので注意が必要だ。次に氷水にあてて冷やすと固まっていくが、このとき冷やし過ぎると固形に戻ってしまい、 溶かした意味がなくなるので25℃くらいまでで止める。最後に1~2℃上げて 終了だ。ブラック、ホワイト、ミルクで温度帯が異なるので注意が必要だ。

この最後に少し上げるというのが、Ⅴ型にもっていくために重要なテクニックだ。
Ⅰ型よりⅡ型、Ⅲ型と上がっていくにしたがって強固な結晶体になり融点が高くなる(溶けづらくなる)ので、この性質を利用して、最後にちょっと温度を上げてやることでⅤ型以外の型を溶かして、Ⅴ型に揃えるわけだ。

<実習開始>
「さあ、今日もテンパリング、失敗したらお仕置きだからね~」
「は、はい。頑張ります」
例によって、今日もお仕置きマダムとの共同作業(トホホ 笑)

2人でチョコを溶かし、慎重に作業を進める。冷やすときにあまり冷やし過ぎると一からやり直しだ。温度計を利用してきっちりやる。最後に1~2℃上げるというのがなかなか難しい。お湯につけすぎると温度が上がり過ぎて、これまたやり直しだ。

なんとかテンパリングをクリアし、絞り袋に入れて、円形に絞る。チョコが固まる前にナッツやレーズンなどを置いていく。2人のテンポを合わせないといけない。なんとか、やり終える。あとは綺麗に固まってくれるのを祈るのみ。

トリュフの作業にとりかかる。温めた生クリームと溶かしたチョコを合わせていく。何回かに分けてしっかりと乳化させることが大切だ。風味づけのグランマニエを入れる。バターなども加え、バーミックスでなめらかにする。シートの上に半球状に絞り、冷やす。

冷えたものを取り出し、2つを合わせて球体にして、テンパリングしたチョコを くぐらせて、カカオパウダーの中へ。最後にフォークで少し模様をつけて本物のトリュフに似せ、冷やす。

なんとか作業完了!
慣れない作業で、作業着はチョコまみれだ。
熱湯で洗わないととれないらしい。これからしばらくは、洗濯もたいへんだ。

つづく

 

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。

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