Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のお菓子修業日記>

vol.42 チョコレート その1

今日から上級クラスが始まった。
クラスメートは中級クラスのときとほぼ一緒なのだが、最大の違いはなんと通称「お仕置きマダム」とペアを組むことになったこと。

「お仕置きマダム」とは、スリムで美人さんなのだが、超~気の強い奥様。
小学生の女の子が一人いるママさんでもある。
中級クラスのときから一緒で、私とは仲良し??
「お仕置きだからね~」が口癖! 受難の日々が始まる(笑)

◇◇◇

<デモ開始>
先生はフランス人。奥さんは日本人でカタコトの日本語は話せるらしいが、講義は全てフランス語。お菓子作りにも精通した通訳さんがついて、先生のいうことを翻訳してくれる。

上級クラスの最初の何回かは、ひたすらチョコレートをやってもらう。目的はテンパリングに慣れてもらうことだ。

テンパリングの詳しいことは、これから何回かに分けて説明していくので、今回はチョコレート全体について概略を理解してほしい。

まず、製菓用のチョコレートはクーベルチュールチョコレートと呼ぶ。
英語ではCouverture chocolate、フランス語ではChocolat de couvertureという。
フランス語で「覆い(おおい)」という意味。成分について総カカオ固形分35%以上、カカオバター31%以上、無脂カカオ固形分2.5%以上、カカオバター以外の代用油脂は使用不可という厳格な規定がある。

小さい一口大のチョコレートを総称して「ボンボンショコラ」と呼ぶ。
授業では、ボンボンショコラを作る以外にデコレーションや「ボンボニエール」と呼ばれる、チョコレートの箱などを作っていく。

チョコレートを綺麗に固まらせるための技法がテンパリングだ。とりあえず、今日のところはそう理解してくれればよい。
クーベルチュールチョコレートは、板状もしくはタブレット状で固形なので、一度溶かして流動性のある状態にして、成型し固めるという手順が必要となる。

チョコレートには、日本語で言うと、ブラック(スイート)、ミルク、ホワイトの3種類があるが、それぞれ溶解温度や冷却温度が異なるので、それぞれの温度帯を覚えなければならない。
テンパリングには色々なやり方があるが、授業ではもっとも簡単な方法でおこなう。まずは60度くらいのお湯をボールに用意して、そこに刻んだクーベルチュールチョコレートを入れたボールをつけて、湯煎で溶かす。

十分に溶けたら、今度は氷水を入れたボールにつけて冷やす。チョコレートが 固まる温度まで下がったら、最後にちょっとだけ湯煎して温度を上げて、型に流し込む。

今日はブラック、フランス語で「ノワール」を使って実際にテンパリングをやってもらう。ノワールの場合、溶解温度は50~55℃、冷却温度は27~28℃、 テンパリング温度は31~32℃である。

<実習開始>
お仕置きマダムとのペアでの共同作業が始まる。

マダム:「ほら、早く、湯煎のお湯を沸かしなさいよ」
私:「はい、わかりました」
マダム:「次は、氷水を用意して!」
     ひたすら、こき使われる(笑)
マダム:「テンパリング、失敗したらお仕置きだからね!!」
私:「ひぇ~、わ、わかりました~」

チョコレートを湯煎して溶かし、氷水にあてて冷やし、最後に少し温める。
先生は、唇の下の部分にヘラをあてて、温度を確かめながら作業していたので
真似をしてみるが、初心者に微妙な温度の違いなどわかるはずがない。
子供みたいに唇の下がチョコで汚れただけだ(笑)

ボール中のチョコレートに温度計を差し込んで、温度をみながら作業する。
型に流し込み、無事固まってくれた。
お仕置きを免れ、とりあえず今日のところは、ひと安心(笑)

つづく

 

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。

◇◇◇

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