Sweets Specialist's WEB MAGAZINE

<猫井登のお菓子修業日記>

vol.38 ジャンドゥージャ

<デモ開始>
今回は、ジャンドゥージャを使ったアントルメを作ってもらう。
ジャンドゥージャとは、ローストしたヘーゼルナッツを細かくすりつぶしたものをチョコレートに混ぜ込んだものである。

ジャンドゥージャは生クリームと合わせてムース仕立てにする。ビスキュイ生地にもヘーゼルナッツパウダーとココアパウダーを混ぜ、ジャンドゥージャとの相性をよくする。ケーキ自体の作成は、難しくないが、デコレーションにテクニックが必要である。

まずは、ケーキの土台にチョコレートをピストレする。ピストレとは、テンパリングしたチョコレートを機械に入れ、ケーキの表面に噴霧することである。ペンキを壁にスプレーするのと同じ。

機械で吹き付けられたチョコレートはケーキの表面で固まり、ケーキをコーティングする。ビロードの布で覆ったような質感が出るので、ケーキデコレーションではよく用いられる技法の1つである。

次に、薄く伸ばしたチョコレートを加工して、エバンタイユ(扇)などの形を作り、ケーキの上と側面に飾る。先生は手早くケーキを作り上げ、デコレーションを施していくが、これは自分でやると、かなり厄介かも。午後の実習が思いやられる。

<昼休み>
学校に来る日の朝食はどうしているのか、ということが話題になる。

私が駅前のサテン(喫茶店)でモーニングを頼むと言ったら、
「あんた、サテンっていつの言葉よ!?今はCAFÉって、言うのよ!!」
例によって、お仕置きマダムにチャチャを入れられる(笑)
放っといてくれーい。
私の頃は、「学生街の喫茶店」なんて歌がヒットして、サテンと言うのがオシャレだったんだよ~(笑)

<実習開始>
まずは、ビスキュイ生地を作っていく。渦巻状に天板の上に絞り、オーブンに入れる。焼き上がった生地にシロップを打ち、ムースと交互に重ねていく。ケーキの作成については、特に問題はない。

問題はこれからだ。 薄く伸ばしてチョコレートをトライアングル(逆三角形のヘラ)で筒状にしていくが、温度管理が難しい。チョコレートが冷たすぎると割れるし、温かすぎるとグズグズになる。

次は、エバンタイユ(扇)だが???。シワのよったカーテンのようになってしまう(笑)先生がやると、簡単そうに見えるのだが。

悩んでいたら、先生が横に来て、教えてくれる。
「ほら、しっかりトライアングルを持って、指をあてて」
先生に、手を持ってもらうと出来るのだが、一人でやると???
なんでじゃー??

ケーキの土台にピストレを施す。広範囲にチョコレートの霧が噴出されるので、ビニールを掛けたダンボールでつい立をした中にケーキを置いて作業を行なう。かなり大掛かり。自宅では、ちょっと無理かも。失敗したら、壁がチョコレートでコーティングされて、お菓子の家になってしまう(笑)。

これも簡単そうに見えて、均一にケーキをコーティングするのは、なかなか難しい。なんだかマダラ模様になってしまった。先程作ったチョコレートの飾りをケーキにつけて、なんとか完成。

本日の教訓。先生が簡単そうにやるものほど難しい。
実際、過去に、「先生があまりにも簡単そうにやるのが悪い。もっと難しそうにやれ!」とわけのわからないクレームをつけた受講生がいたとか。
先生というお仕事もたいへんです。

つづく

 

プロフィール:
猫井 登(ねこい のぼる)
1960年、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理師科で学び、調理師免許を取得。ル・コルドン・ブルー代官山校で、菓子ディプロムを取得。その後、フランスのエコール・リッツ・エスコフィエ、ウィーン、ロンドン等で製菓を学ぶ。著書:「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス)、「スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版)、「お菓子ノート」(新人物往来社)ほか。

◇◇◇

このメルマガは、日本創芸学院の「お菓子作り講座」をご受講いただいた方にお送りしています。

お問い合わせ:学習サービス課 swinfo@sougei.co.jp



Back Number
バックナンバーはこちら