ハーブ・アロマ メルマガ 「佐々木薫先生のエッセイ」
vol.30
ハリー・ポッターと薬草療法
2018年がスタートしました。今年は戌年。「イヌ」に関連する名のハーブとしては、「ドッグローズ」「イヌハッカ」などがありますが、「イヌ」には「役に立たない」というような意味もあるらしく、イヌハッカ(キャットニップ・Nepeta cataria) は薬草であるハッカほどの価値がないため、この名がついたという説もあります。一方、ドッグローズ(Rosa canina)は果実をローズヒップとしてハーブティーなどに用いるハーブですが、学名のcaninaがラテン語で犬という意味で、昔、この根を狂犬病の治療に使ったという説に由来します。
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年頭には、日本でマンドレイク(マンドラゴラ Mandragora officinarum,M. autumnalis,M.caulescens)の花が咲いたというニュースがあり、「ハリー・ポッターにも登場する薬草」として話題でした。マンドレイクは、根っこが人のカタチをしていることで有名で、引き抜くと「ギャー」と悲鳴をあげ、その声を聞いた人は、発狂して死んでしまうという言い伝えがあります。魔法や錬金術を元にした作品の中に度々登場し、あまりに奇異な伝説のため、実在しないものと誤解されることがありますが、ナス科の植物で、根に幻覚作用や麻痺を起こすアルカロイドを含み、強い毒性があります。古代ローマ時代の本草書にも麻酔薬として登場するほど、古くから知られ、中世の魔女の儀式には欠かせず、多くの薬局方にも収載され、ホメオパシーの処方薬(レメディー)にもなっています。
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昨年11月に訪問したイタリアには、中世の僧院医学を継承する修道院薬局、薬草薬局が、今も残っています。店内には古い薬草箱が並び、中にはドクロマークのついた棚もあります。毒草が保管されていた箱です。もちろん、今は使われてはいません。おそらく、そこにマンドレイクもあったことでしょう。修道士に代わり今は国家資格を持った薬剤師が、不調に合わせ、ハーブを処方してくれます。クリニックで処方箋をもらい、そのハーブを買いに来る人もいるようです。薬剤師はどこかハリー・ポッター似。毒草も薬草も、ここではとても身近な存在とうかがえました。その頃、風邪のセキが長引いていた私への処方は、サクランボ、マーシュマロウ、レモンバーム、ポピー、エルダーフラワー、タイム、パッションフラワーのブレンドでした。飲みにくい場合はハチミツを加えて、というアドバイスでしたが、試してみると、そのままでも飲みにくい味ではありませんが、加えると本当においしく、ハチミツの気管支への効果もあいまって、セキは軽くなったように思います。
![]() どこかハリー・ポッターに似てみえます。 |
寒さは一段と厳しくなってきますが、皆さま体調に気をつけ、本年もよろしくお願いいたします。
日本園芸協会 指導部 佐々木薫
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