herb& aroma mail magazine

ハーブ・アロマ メルマガ 「佐々木薫先生のエッセイ」
vol.29

ハーブとアロマで風邪対策

 先週まで、私はセキとノドの痛みが続き、長引く風邪に悩まされていました。皆さんはいかがでしょうか。風邪の予防と言えば、ユーカリやティートゥリーの精油が思い浮かびますが、どちらもフトモモ科、オーストラリアで伝統的に使われて来たハーブです。最近話題のマヌカハニーも、実は同じフトモモ科のマヌカの花から採れる蜂蜜です。その抗菌作用は植物そのものが作り出す成分と、ミツバチとの共同作業により作り出されるメチルグリオキサールによるものとされます。過酷な環境に自生する植物たちが、生き延びるために作り出すパワーの賜物と言えるでしょう。

▼ 自生するティートゥリーの木
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 ティートゥリーMelaleuca alternifolia とマヌカLeptospermum scoparium は同じフトモモ科ですが、まったく別の植物であるにも関わらず、混同されやすいハーブでした。というのも、イギリスの探検家キャプテン・クックが双方を「ティートゥリー(お茶の木)」としてヨーロッパに紹介したという逸話があるためです。オーストラリアで先住民がお茶として飲んでいるのを見てティートゥリーとして紹介し、また、ニュージーランドに着いた時、胃腸病に苦しむ乗組員の治療にと提供されたマヌカのお茶を、ティートゥリーとして紹介したというものです。その名残りとしてマヌカには、「ニュージーランド・ティートゥリー」という別名があります。

▼ ティートゥリーの木

 オーストラリアの先住民族アボリジニの時代から利用されてきたティートゥリーには、たくさんの逸話があります。ティートゥリーが多く自生するバンガワルバン谷、この地域には湖や湧き水がたまってできた小さな池がたくさんあり、そこは「Magical Lagoon」と呼ばれる癒しのスポットになっていると言います。ラグーンのまわりにはティートゥリーの木が好んで生育し、そのエキスが水に溶け込んでいます。先住民の女性たちはこの水に不思議な力があることを知っていて、子供がケガをしたり虫に刺された時、連れてきて水浴びをさせ、また、子供を産む時、ここに来たそうです。風邪をひいた時は、ティートゥリーの葉をすりつぶして吸入したり、お茶にして飲んだり、ラグーンはまさに森のクリニックのような場でした。

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今でもその湖畔にたたずんでいると、何とも言えない静けさに包まれ、とても静謐な気持ちになります。採取狩猟民族だった先住民たちが長い狩りの旅から戻ると、ここに集まり疲れを癒す場でもあったそうです。

▼ マヌカの花

 ティートゥリーもマヌカもどちらも枝葉から精油が採れます。ティートゥリーは高い抗菌性を持ちながらも、安全性も高い、比較的おだやかに働きかけてくれること、多様な細菌に対し適応があることで使いやすい精油です。マヌカの精油はあまり知られていませんが、ティートゥリー以上の抗菌性を示します。香りもちょっと強いので、他の精油とブレンドし、芳香浴として使うのがおすすめです。

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 精油の香りを楽しんだりハチミツを食するだけでなく、その背景にまで思いを馳せてみることも、風邪のストレスを癒すことに貢献してくれると思います。


日本園芸協会 指導部 佐々木薫



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佐々木 薫(ささきかおる)
プロフィール:
公益社団法人日本アロマ環境協会認定アロマテラピープロフェッショナル。 NHKをはじめテレビ、ラジオの出演多数。 日本園芸協会の通信教育講座「ハーブコーディネーター養成講座」テキスト執筆者。

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日本園芸協会 学習サービス課 aroma@gardening.or.jp




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