herb& aroma mail magazine

ハーブ・アロマ メルマガ 「佐々木薫先生のエッセイ」
vol.27

夏のリフレッシュにローズウォーター

 ハーブを水蒸気蒸留し、精油の副産物として得られる蒸留水は、化粧品、食品などに利用されています。その蒸留水には微量の芳香成分が溶け込むため、芳香蒸留水とも呼ばれますが、特にダマスクローズは、水に溶け込みやすい水溶性の芳香成分を多く含み、ローズウォーターの香りは濃厚です。

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 同じひとつのダマスクローズから採れても、精油とローズウォーターでは香りが違います。精油の主要成分はシトロネロール、ゲラニオール、ローズウォーターはフェニルエチルアルコールというように、中心になる成分が異なるため、香りにも違いがあるのです。ふたつをブレンドしてみると、香りはより深くなり、芳醇なバラの香りが楽しめます。


 精油は香りも濃厚で、原液を直接肌につけることは出来ませんが、ローズウォーターは微香性でローションやミストとして手軽に使えます。また、3トンの花から採れる精油は1㎏ですが、バラ水は大量に採れます。大変高価な精油に対し、バラ水は価格面からも気軽に使えます。

 現在、最も香り高いバラ精油を産出するブルガリアで、香料バラの栽培が始まった当初は、実はローズウォーターの生産が目的でした。バラ水はイスラム圏において、宗教儀式、薬用、食用等、幅広い需要がありました。時代と共に技術、設備開発も進み、蒸留器も大型化され、精油の抽出技術も進化します。また、ヨーロッパの香料文化の流行なども背景とし、ブルガリアのローズ精油・ローズウォーター生産は、今日の香料産業へと発展してきました。

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 ローズウォーターは、イスラム圏の国々では、今なお、清めの水として用いられ、その香り漂う所、神聖な場所として崇められます。また、お祈りをする際に手に振りかけたり、などにも使われています。伝統療法では治療薬として用いられ、消化によく、胃の調子を整えるとされます。そのほか、ドレッシングやお菓子、ドリンクの香りづけなどにも使われます。イランの家庭では冷蔵庫にペットボトルに入ったローズウォーターが常備されます。ブルガリアでは、産地バラの谷で二日酔いの妙薬として愛用されていました。目覚めにスプーン1杯のローズウォーターが効くそうです。


 使いやすいようにローズウォーターをスプレーボトルに入れ、夏は冷蔵庫で冷やしておいてもよいでしょう。ほてった肌を冷却したり、疲れた気分をさっぱりと盛り上げてくれます。エアコンなどで乾燥しがちな時は、顔や髪に定期的にスプレーします。ゆるやかな抗菌作用もあるので、外出時にも活用できます。夏を乗り切るサポータ―としてお手元にどうぞ。

※日本国内で販売されているローズウォーターの多くは化粧品に分類され、食用にはお勧めしません


日本園芸協会 指導部 佐々木薫



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佐々木 薫(ささきかおる)
プロフィール:
公益社団法人日本アロマ環境協会認定アロマテラピープロフェッショナル。 NHKをはじめテレビ、ラジオの出演多数。 日本園芸協会の通信教育講座「ハーブコーディネーター養成講座」テキスト執筆者。

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