ハーブ・アロマ メルマガ 「佐々木薫先生のエッセイ」
vol.17
魔女とハーブ
ハロウィン(Halloween)が近づきます。もとは、万聖節(キリスト教で毎年11月1日にあらゆる聖人を記念する祝日)の前夜祭。秋の収穫を祝い、悪霊を追い出す祭りが起源と言われています。また、古代ケルト民族は、1年の終わりを10月31日と定め、その夜を死者の祭りとしました。死者の霊が親族を訪れる夜であり、悪霊が横暴し、子どもたちをさらったり、作物や家畜に害をなす夜でもありました。現在は宗教色からは離れ、民間行事として定着し、魔女やお化けの仮装、本来は子供たちのものでしたが、最近は大人も楽しむイベントとなり、日本でも盛んになってきました。
▼ トリカブトの花![]() |
魔女とハーブには深いつながりがあります。魔女が空を飛ぶ時からだに塗った軟膏は、ハーブを使って作ったものであり、魔女が呪術や魔除けに使ったのもハーブでした。たとえばどんなものがあるかというと、ナス科のヒヨス(Hyoscyamus niger)、セリ科のドクニンジン(Conium maculatum)などアルカロイドを含み、幻覚作用のあるものです。どちらも強い毒性を持つ毒草ですが、その成分は麻酔薬や鎮痛剤などの薬品としても使われています。殺人用に使われたのが、トリカブト(Aconitum napellus)。日本にも自生するためおなじみですが、古代から毒矢などにも使われてきました。魔女に関連するハーブは、現代では、いわゆる毒草として扱われるものがほとんどです。中にはベラドンナ(Atropa belladonna)のように美顔に用いられた毒草もあります。瞳孔を開く作用が、目を輝かせるとして人気を博したといいます。日本に自生するハシリドコロも同じナス科で似たような作用があります。シーボルトは眼科の手術にこのハーブを使いました。しかし、その実を5~10粒で死に至るそうです。
魔除けのハーブとして使われたハーブは、オレガノ、セントジョンズワート、ネトル、バレリアン、ホアハウンドなどです。日常でもよく使われるハーブですが、比較的香りの強いものに、その効果があると信じられたのでしょうか。日常の体験などから導かれた用途や伝説が、化学的な分析による評価とも一致するのが不思議なところです。
▼ オレガノ![]() |
魔女と魔女好きの人たちにとって大事な日が「ヴァルプルギスの夜」です。ゲーテの戯曲『ファウスト』にもその様子が描かれていますが、古代ケルトの春の祭り5月1日の前夜にあたり、魔女達の祝宴が開かれる日です。春と秋、魔法使いならぬ、ハーブ使いが騒ぎ出す日がもうすぐやってきます。ハロウィンの日を魔女になった気分でハーブを楽しむ日としてはいかがでしょうか。もちろん、よい魔女になって。
日本園芸協会 指導部 佐々木薫
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